ABSTRACT 22(1-2)
 一般演題一覧 トップ 


アゾキシメタン誘発大腸がんにおけるβ-カテニンの変異: 高橋真美, 福田一典, 杉村 隆, 若林敬二 (国立がんセ・研・がん予防)

Mutations of b-catenin in colon tumors induced by azoxymethane: Mami TAKAHASHI, Kazunori FUKUDA, Takashi SUGIMURA, Keiji WAKABAYASHI (Cancer Prev. Div., Natl. Cancer Center Res. Inst.)

β-カテニンは、カテニン-カドヘリン複合体を形成して細胞接着に重要な役割を果たすとともに、Wntシグナルによる情報伝達系の因子としても働いている。細胞質中のβ-カテニン量の制御にはAPC蛋白質との結合やGSK-3βによるリン酸化が関与しており、APCの変異と同様にβ-カテニンの異常も腫瘍発生に深い関わりを持つことが示唆されている。アゾキシメタン誘発ラット大腸がんにおけるβ-カテニン遺伝子の変異をPCR-SSCP法及びダイレクトシークエンス法によって調べた。その結果、β-カテニンのGSK-3βリン酸化部位周辺の保存配列にGからAへの点突然変異が高頻度(8例中6例)に検出された。β-カテニンの細胞内局在を免疫組織染色にて調べると、非がん部大腸粘膜では細胞膜に局在しているのに対し、大腸がん及び腺腫では細胞質での蓄積や核への移行が認められた。以上のことより、アゾキシメタン誘発ラット大腸発がんではβ-カテニンの異常が重要な役割を果たしていることが示唆された。