ABSTRACT 23(1-2)
ラットとハムスタ−の実験腫瘍におけるテロメラ−ゼ活性:佐々木康孝, 辻内俊文, 城戸顕,崎谷博征, 伊木勝道, 堤雅弘, 小西陽一(奈良医大・がんセ・腫瘍病理)
Increased telomerase activities of various tumors in rats and hamstars : Yasutaka SASAKI,Tosifumi TSUJIUCHI,Akira KIDO,Makoto TAKAHAMA,Hiroyuki SAKITANI,Katsumichi IKI,Masahiro TSUTSUMI,Yoichi KONISHI (Dept.Oncol.Pathol.,Cancer Cntr.,Nara Med.Univ)
これまでに種々のヒト癌細胞においてテロメラ−ゼの活性上昇が報告されている.しかし動物実験による報告例は少なく,今回我々は実験動物を用いた発癌系におけるテロメラーゼ活性を検索した.[材料と方法](1)コリン欠乏アミノ酸食によって誘発したラット肝過形成結節並びに肝細胞癌 (2) N-ethyl-N-nitrosourea(ENU) により誘発したラット神経膠腫 (3)自然発生及び4-hydroxyamino quinoline 1-oxide(4-HAQO) により誘発したラット骨肉腫皮下継代移植株 (4)N-nitrosobis(2-oxopropyl)amine(BOP) により誘発したハムスター膵管癌及びその皮下継代移植株・細胞培養株(5)BOPにより誘発したハムスタ−胆管癌を用い,Telomeric Repeat Amplification Protocol(TRAP)法によってテロメラーゼ活性を測定しイメージアナライザーを用いて正常組織と定量的に比較解析した.[結果]いずれの組織および細胞株においても正常組織に比べ著名なテロメラ−ゼ活性上昇を認めた.以上の結果より,動物においてもヒトと同様にテロメラーゼの活性化が悪性腫瘍の発生において重要な役割を演じることが判明した.このことはテロメラーゼの生物学的意義を検索するうえで,動物を用いた発癌実験系が有用な情報源となり得る可能性を示すものである.