ABSTRACT 26(1-3)
ヒト正常型c-Ha-rasトランスジェニックラットにおける食道発がん感受性の解析:鳥山-馬場弘靖1,朝元誠人1,太田智則1,安東輝1,竹下文隆1,落谷孝広2,寺田雅昭2,津田洋幸1(国立がんセ・研・1化療,2分子腫瘍)
Susceptibility of c-Ha-ras transgenic rats to NMBA esophageal carcinogenesis:Hiroyasu BABA-TORIYAMA1, Makoto ASAMOTO1, Tomonori OTA1, Akira ANDO1, Fumitaka TAKESHITA1, Takahiro OCHIYA2, Masaaki TERADA2, Hiroyuki TSUDA1 (EXP.Pathol. & Chemother. Div.1, Genetics Div.2, Natl. Cancer Cer. Res. Inst.)
ラットにN-nitorosomethylbenzylamine (NMBA)を皮下投与すると高率に食道腫瘍が発生し,H-rasの活性化が認められる。 正常型c-Ha-rasトランスジェニックマウスは肺、皮膚、前胃など限られた臓器に発がん感受性が高いことが知られている。我々はヒト正常型c-Ha-rasトランスジェニックラットを作成して発がん感受性の検索を行ない,マウスでは実験系の得られていない食道発がんにおいて極めて感受性の高いことを明らかにした。【方法】6週齢雄のラットにNMBA 0.5mg/kgを週3回,5週間皮下投与し,全経過10週にて屠殺した。【結果】NMBAを投与されたTgラットは,極めて短期間に100%の動物(19匹)に食道腫瘍(扁平上皮乳頭腫)の発生が認められた。non-Tgでは18例中11例(61.1%)で、発生率に有意の差が認められた。一匹当たりの腫瘍の個数は, Tgラットでは11.05ア7.83個,non-Tgでは1.67ア2.06 個と顕著な差が認められた。このTgラットでは導入された3コピーの遺伝子が食道をはじめすべての臓器で発現していることが確認されている。Tgラットに発生した腫瘍について,導入した遺伝子の変異の数等について現在検討中である。
【結論】NMBA投与による食道発がんモデルにおいて、ヒトプロト型c-Ha-ras遺伝子導入ラットでは食道腫瘍の発生期間、発生頻度,発生個数のいずれの項目に於いても感受性が亢進していることが確認された。(厚生省がん研究助成金,がん克服新10カ年戦略研究事業,文部省がん重点による)