ABSTRACT 27(1-3)
ヒトプロト型c-Ha-ras遺伝子導入トランスジェニック(rasH2)マウスにおけるurethaneないしvinyl carbamate誘発肺腫瘍における導入遺伝子変異の経時的観察:三森国敏1, 若菜茂晴2, 丸山千佳2, 安原加壽雄1, 小野寺博志1, 高橋道人1, 広瀬雅雄1, 野村達次2 (1国立医衛研・病理,2実中研)
Time course observation of ras gene mutations in lung tumors of transgenic mice carrying the human prototype c-Ha-ras gene induced by urethane or vinyl carbamate: Kunitoshi MITSUMORI1, Shigeharu WAKANA2, Chika MARUYAMA2, Kazuo YASUHARA1, Hiroshi ONODERA1, Michihito TAKAHASHI1, Masao HIROSE1 and Tatsuji NOMURA2 (1Div. of Pathol., Natl. Inst. Hlth. Sci., 2Central Inst. Exp. Anim.)
【目的】urethane(UR)ないしその代謝物vinyl carbamate(VC)をrasH2マウスに1回投与すると,肺腫瘍の誘発が増強され,UR誘発肺腫瘍には導入遺伝子の点突然変異が高頻度に発現するが,VC誘発肺腫瘍では極めて低いことを既に報告した.今回,URないしVCの肺腫瘍誘発に導入遺伝子が早期から関与するか否かを検討した.【材料および方法】雌雄のrasH2マウスおよびその同腹仔の非導入(non-Tg)マウスにUR 1000mg/kgまたはVC 60 mg/kgを1回腹腔内投与した.2.5あるいは 5週間毎に25週まで,URおよびVC群の数匹の動物を殺処分し,肺腫瘍における導入遺伝子の点突然変異を解析した.【結果】URおよびVC群共に,投与後5週より肺腫瘍が誘発された.UR群の肺腫瘍では,投与後5週からコドン61に点突然変異(CAGからCTG)がみられ,その頻度は0から100%(平均:雄60%,雌52%)であった.同様の点突然変異は,VC群では投与後10週よりみられたが,その頻度は0から66.7%(平均:雄17%,雌33%)であり,時間の経過と共に増加する傾向を示さなかった.【結論】導入遺伝子の点突然変異が,URおよびVCのrasH2マウスにおける肺腫瘍誘発に必ずしも関与していないことが示唆された.