ABSTRACT 29(1-3)
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芳香族炭化水素受容体遺伝子欠損マウスを用いたベンズピレン投与による発癌感受性の検討:清水靖仁1,中鶴陽子1,三村純正2,勝木元也3,藤井義明2,石川隆俊1(東大・医・分子病理1,東北大・理・化学2,東大・医科研・人疾患セ3

Loss of carcinogenesis in aryl hydrocarbon recepter gene deficient mice after treatment with benzo[a]pyrene. : Yasuhito SHIMIZU1, Yoko NAKATSURU1, Junsei MIMURA2, Motoya KATSUKI3, Yoshiaki FUJII-KURIYAMA2, Takatoshi ISHIKAWA1 (Dept. of Pathology , Univ. of Tokyo1, Dept. of Chemistry, Tohoku Univ.2, Dept.DNA Biology and Embryo Engineering., Inst.Med.Sci., Univ. Tokyo3 )

[目的]環境発癌物質のダイオキシンやベンズピレンなどの芳香族炭化水素(AH:aryl-hydrocarbon)は、細胞質内のAHレセプター(AhR)に結合し、aryl-hydrocarbon recepter nuclear translocator(Arnt)とヘテロ2量体を形成後、核内へと移行し、P450のCYP1AIの転写促進が誘導されることで、AH自身が代謝を受け初めて、DNAに結合、発癌性を発揮する。 したがって、AhR遺伝子を欠損させたマウスでは、CYP1AIの転写促進が誘導されず、その結果発癌性が低下ないし消失すると考えられる。しかしこれまで実際にこれらのマウスで腫瘍の発生をみた報告はない。そこで今回我々は、AhRに結合し、代謝酵素を誘導する発癌物質のベンズピレンをAhR遺伝子欠損マウスに投与した際の発癌感受性について検討した。
[方法]AhR遺伝子欠損マウス(Mimura et al., Genes to Cells. 1997)のAhR(+/+),(+/-),(-/-)の各遺伝子型の雄マウスを用いた。オリーブオイル0.2mlに懸濁したベンズピレン1mgを2回、背部の皮下に注射した。初回投与後20週後に、形成された皮下腫瘤を病理組織学的に検索し発癌感受性を評価した。
[結果及び考察]AhR(+/+)および(+/-)の各遺伝子型のマウスでは、100%において0.5〜4cm大の腫瘤形成(組織学的には肉腫)をみとめた。一方AhR(-/-)の遺伝子型のマウスでは、一例も腫瘤の形成を認めなかった。芳香族炭化水素による発癌が、AhRを介して行われることが動物実験レベルで明らかになった。