ABSTRACT 30(1-3)
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酸化的ヌクレオチド損傷が誘発する変異の分子機構の解析:○ 紙谷 浩之、葛西 宏(産業医大・産業生態研)

Molecular mechanisms of mutations induced by oxidatively damaged nucleotides: Hiroyuki KAMIYA, Hiroshi KASAI (Inst. Indust. Ecolg. Sci., Univ. Occup. Environ. Hlth.)

【目的】活性酸素による変異の誘発には、DNA中の塩基(及び糖)が直接的に修飾されて生ずる損傷と、DNA前駆体に生ずる酸化的ヌクレオチド損傷の両者が重要であることが示されている。我々は、既に、主要な酸化的ヌクレオチド損傷である、8-OH-dGTPと2-OH-dATPが細胞内で誘発する変異を報告した1)。今回、その変異誘発機構をさらに詳しく検討した。
【方法】レポーター遺伝子であるsupF遺伝子部位にギャップを有するプラスミドを調製し、精製した8-OH-dGTPと2-OH-dATPを加えてDNAポリメラーゼ反応を行った。このプラスミドを大腸菌に導入した後、誘発変異の解析を行った。
【結果】両ヌクレオチドは、ほぼ同程度の変異誘発能を示した。8-OH-dGTPはA→C変異を、2-OH-dATPはG→T変異をそれぞれ誘発した。現在、他の酸化的ヌクレオチド損傷の誘発する変異を解析中である。
【結論】8-OH-dGTPは既に報告されているように、鋳型DNA中のA残基に対して取り込まれたことが示された。一方、2-OH-dATPは鋳型DNA中のG残基に対して取り込まれることが初めて示された。また、両者の変異率が試験管内の系においても同程度であることも合わせて示された。
1)J. Biol. Chem., 273, in press (1998).