ABSTRACT 34(1-3)
ラット肝癌AH136B固型腫瘍におけるheme oxygenase-1の発現とzinc protoporphyrinの抗腫瘍効果:田中真一郎1,2, 赤池孝章2, 池辺宗三人1,2, 藤井重元2, 土居浩一1, 別府透1, 小川道雄1, 前田浩2 (熊本大・医・1外・2微生物)
Induction of heme oxygenase-1 in experimental solid tumors and antitumor effect of zinc protoporphyrin: Shinichiro TANAKA1,2, Takaaki AKAIKE2, Norisato IKEBE1,2, Shigemoto FUJII2, Koichi DOI1, Toru BEPPU1, Michio OGAWA1, Hiroshi MAEDA2 (Depts. of 1Surg. and 2Microbiol. , Kumamoto Univ. Sch. of Med.)
【はじめに】我々は、固型腫瘍において産生される過剰なNOによる細胞傷害や、腫瘍血流の不均衡に対する腫瘍の自己防御システムの一つとして、抗酸化能を有するheme oxygenase-1 (HO-1) の発現を報告してきた。さらに今回、固型腫瘍におけるHO活性の変動と、その阻害剤であるzinc protoporphyrin (ZnPP) の抗腫瘍効果について検討した。【方法】(1)AH136B細胞2×106をラット (Donryu) の足背部に移植し、経時的にHOの活性を測定した。あわせて、腫瘍組織におけるHO-1の発現をNorthernおよびWestern blottingにより解析した。(2)AH136B固型腫瘍にその栄養動脈を介してZnPPを1.0μmol/kg投与し、腫瘍増殖に与える影響について検討した。【結果および考察】AH136B固型腫瘍のHO活性測定により、本腫瘍においてHO活性が著明に上昇していることがわかった。即ち、腫瘍組織のHO活性は肝臓における活性より有意に高値 (3倍) を示した。また、HO-1のNorthernおよびWestern blot解析により、このHO活性の上昇は、HO-1の発現誘導によるものと考えられた。興味あることに、本固型腫瘍のHO活性は、腫瘍の発育が最も旺盛である移植後2〜3週間に最も高くなったが、増殖におくれて漸時低下した。またこれらの活性は、ZnPPにより、ほぼ完全にに抑制された。一方、ZnPP動注実験においては、コントロール群 (vehicle投与群) が動注前と同様な腫瘍の発育を示したのに対し、ZnPP動注群は動注後2日目以降その発育が有意に抑制された (9日後対照比で1/3)。以上の結果より、HOが腫瘍細胞にとって防御的に機能していることが明らかになった。さらにZnPPによる腫瘍増殖抑制効果は、HO-1 inhibitorの抗腫瘍剤としての応用の可能性を示唆するものであると思われた。