ABSTRACT 35(1-3)
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家族性大腸腺腫細胞亜株FPCK-1-1細胞の生体内プログレッションモデルの確立: 岡田 太、河口徳一、ハパハク・ハスム、武市紀年、守内哲也、北川知行、細川眞澄男(北大・医・癌研病理、癌研・研・病理、北大・医・癌研細胞制御)

Establishment of in vivo progression model of a human FAP colonic adenoma subline, FPCK-1-1: Futoshi OKADA1, Tokuichi KAWAGUCHI2, Hasem HABELHAH1, Noritoshi TAKEICHI3, Tetsuya MORIUCHI3, Tomoyuki KITAGAWA2, Masuo HOSOKAWA1 (1Lab. Pathol., Cancer Inst., Hokkaido Univ. Sch. Med., 2Dept. Pathol., Cancer Inst., 3Lab. Cell Biol., Cancer Inst., Hokkaido Univ. Sch. Med.)

【目的】発癌は細胞癌化とこれに連続するプログレッションより成り立ち、各段階には特定の遺伝子異常の蓄積を伴うことが明らかにされている。我々は、プログレッション過程を進展させる要因の解析を目的として、ヌードマウスにおけるヒト家族性大腸腺腫細胞の生体内プログレッションモデルの作成を行った。
【方法と結果】FAP患者の大腸腺腫より樹立した培養細胞亜株FPCK-1-1細胞は、ヌードマウスに5x106個単独皮下移植しても造腫瘍性を示さない。しかし異物の培養プラスチックプレートの小片(10x5x1mm)に1x105 個付着後プレートごと皮下移入すると、10例中7例 (70%) に致死増殖する腫瘍の出現を認めた。プレートのみを移入した組織に比べFPCK-1-1細胞を付着させて移入した組織では、間質の顕著な増生とともに炎症細胞の集積と血管新生が観察された。さらに増殖腫瘍より培養株を再樹立し、新たなマウスにプレートの無い状態で5x106個を皮下移植しても致死増殖することから、生体内での自律増殖能を獲得した癌細胞集団であると考えられた。
【結語】ヒト大腸腺腫細胞のマウスプログレッションモデルを確立し、腫瘍局所の炎症がプログレッション過程を促進する要因のひとつと推定された。本モデルは、腸腺腫のプログレッションを進展させる生体内・生体外要因およびプログレッションに伴う細胞内変化の解析に有用と考えられる。