ABSTRACT 37(2-1)
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ヒトパピローマウイルス16型(HPV16)E6によるヒト乳腺上皮細胞不死化にはp53の不活化を必要としない:清野透(愛知がんセ・研・ウイルス)

Inactivation of p53 is not required for immortalization of normal human mammary epithelial cells by human papillomaviruses type 16 (HPV16) E6: Tohru KIYONO (Lab. Viral Oncol., Res. Inst., Aichi Cancer Center)

[目的]ヒト正常乳腺上皮細胞の不死化においてHPV16のE7, E6遺伝子は、それぞれM0, M1と呼ばれる異なる増殖停止期をバイパスさせ、細胞を効率よく不死化する。M0期を自然に逃れた細胞集団はp16INK4aの発現をほぼ失っており、この細胞集団はE6単独で効率よく不死化される。このE6による細胞不死化機構を明らかにする。[方法]種々の変異E6をpost-M0細胞に導入し、その不死化能を比較した。E6の種々の活性に関しては、C末を介したhDLG結合能、E6APを介したp53分解能、テロメラーゼ誘導能を比較検討した。[結果]hDLG結合能、p53分解能の有無にかかわらず、テロメラーゼ活性を誘導したものみがM1をバイパスさせ効率よく細胞を不死化した。このうちp53分解能を欠損した変異E6を導入した細胞では、不死化後もp53, p21は正常レベルに保たれDNA傷害による細胞周期停止能を維持していた。さらに、E6による不死化はテロメラーゼRT触媒サブユニット(hTRT) cDNAの導入によって置換できることが示された。[結論]HPV16 E6によるヒト正常乳腺上皮細胞の不死化にはhDLG結合活性、p53分解誘導活性は不必要であり、テロメラーゼ誘導活性が不死化活性の本態であると結論した。本研究は米国Fred Hutchinson Cancer Research Center, Dennis A. GallowayラボにおいてScott A. Foster, Aloysius J. Klingelhutz, D.A.G.の協力を得て行われた。