ABSTRACT 38(2-1)
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ウイルス肝炎による肝発癌における免疫反応の役割:中本安成1,2, 金子周一1, 小林健一1, Francis V. CHISARI2 (1金沢大・医・1内, 2The Scripps Res. Inst., CA)

Immune Pathogenesis of Hepatocellular Carcinoma: Yasunari NAKAMOTO1,2, Shuichi KANEKO1, Kenichi KOBAYASHI1, Francis V. CHISARI2 (11st. Dept. Int. Med., Kanazawa Univ. Sch. Med., 2The Scripps Res. Inst., CA)

[目的] ウイルス肝炎から肝細胞癌 (肝癌) が発症する機序として、肝炎ウイルスタンパクと宿主との相互作用や慢性肝炎による宿主遺伝子変異の蓄積による高癌化状態が示唆されている。そこでマウスモデルをもちいて肝炎ウイルスタンパクが直接癌化を誘導しない環境において、ウイルス特異的免疫反応によって発症した慢性肝炎が肝癌の誘因となる可能性について検討した。[方法] 免疫学的寛容状態にあり肝細胞傷害、肝癌を発症しないB型肝炎ウイルス(HBV)トランスジェニックマウス107-5D(H-2d)の胸腺を摘出し放射線照射した。これに対してHBVタンパクをもちいて免疫したB10D2(H-2d)マウスの骨髄、脾細胞を移植した。[成績] すべてのマウスに肝炎が発症し、慢性の経過を示した。移植8カ月後に肝細胞の異形性が出現し、17カ月後には 89% (8/9) に肝癌が発症した。また HBV 特異的細胞傷害性Tリンパ球 (CTL) 活性の強さと腫瘍の数、大きさに相関を認めた(R2=0.63)。対照としてトランスジェニックマウスの骨髄、脾細胞を移植した群にCTL活性はみられず、肝癌は 11% (1/9) に認めた。 [結論] 肝炎ウイルス特異的免疫反応による肝細胞傷害が持続することによって、高癌化状態が誘導され肝癌が発症することが示された。