ABSTRACT 40(2-1)
B型肝炎ウイルスX遺伝子によるヒトEF−1αmRNAレベルの転写後調節に関与する細胞因子:嶋津 務, 小池 克郎 (癌研 ・ 研 ・ 遺伝子)
Cellular factor involved in the post-transcriptional regulation of the level of human EF-1α mRNA by hepatitis B virus X gene : Tsutomu SHIMAZU, Katsuto KOIKE (Dept. of Gene Res., The Cancer Inst., JFCR)
B型肝炎ウイルスX遺伝子は、多くのウイルスや細胞の遺伝子の転写を活性化し、B型肝炎のみならず肝癌の発症に関係していることが知られている。昨年の総会で私達は、X遺伝子がヒトEF−1α(human elongation factor 1α) 遺伝子のプロモーター(TATA box)下流の5’非翻訳領域に存在する22塩基を介してmRNAのレベルを転写後に調節する新規な機能を有することを報告した。そこで私達は、X遺伝子によるmRNAレベルの転写後調節のメカニズムを明らかにするべく、X蛋白質応答領域DNAを鋳型としてin vitro transcription で合成したRNAプローブと、HepG2およびHuh7細胞から調製した細胞質抽出液を用い、gel shift assay によりEF−1αmRNAの5’非翻訳領域中の22塩基に結合する細胞因子の解析を試みた。その結果、RNA−蛋白質複合体に由来するバンドが検出され、このバンドは22塩基を含まないプローブを用いたときには出現しないことがわかった。さらに変異プローブを用いた競合実験の結果、この因子は22塩基で形成される2次構造を認識して結合する可能性が示唆された。現在、X蛋白質が恒常的に発現する細胞株を樹立し、X蛋白質の発現に伴うこの因子の質的、量的変化や、endogenous EF-1αmRNAレベルについて検討中である。