ABSTRACT 42(2-1)
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トランスジェニックマウス肝癌における組み込みHBV DNA の構造変化:梶野一徳,高原智子,山本敏樹,樋野興夫(癌研・実験病理)

Rearrangement of the integrated HBV DNA in hepatocellular carcinomas of HBV transgenic mice: Kazunori KAJINO,Tomoko TAKAHARA,Toshiki YAMAMOTO,Okio HINO(Dept. of Experimental Pathology,Cancer Institute)

〔目的〕ヒト肝癌で認められるHBV DNAを介する染色体転座は、HBV DNA配列を介する相同組み換えにより生じているのか? その可能性は充分考えられるものの、直接的な証拠はない。我々は、組み込みHBV DNAが引き起こす染色体再配列(転座を含む)の機序を具体的に調べるためにHBVトランスジェニック(Tg)マウスに発癌剤を投与して肝癌を発生させ、組み込みHBV DNAの構造の変化を解析した。
〔方法〕HBV DNA Tgマウス(C57BL/6) のうち、ゲノム上の異なる2ヶ所以上にHBV DNAを持つ個体、ゲノム上の1ヶ所に持つ個体、およびHBV DNA を持たない個体、計約140匹を対象として、生後15日に DEN (diethylnitrosamine) 20 mg/kgを腹腔内投与し肝癌を作製した。1個体あたり5から7個の肝癌結節と腎臓組織 (=正常部コントロール)を凍結保存してサザン法を行い、発生した肝癌部と正常部 (腎臓)のHBV DNAのパターンを比較した。
〔結果〕DEN投与後約1年の時点で、全ての個体で多数のHCC結節が発生した。今までに128匹の個体において、正常部(腎臓)とHCC結節2個分のみサザン法による解析をしているがその結果、HBV DNAを染色体上の2ヶ所以上に持っていた48匹中18匹(38%)の肝癌において、また染色体上の1ヶ所に HBV DNA を持っていた43匹中5匹(12%)においてHBV DNAのパターンの変化を認めた。 なお異なる複数の個体において同一のパターン変化を示す例が認められたが、そのパターンにも数種類のものがあった。現在、構造変化を示したHBV DNA 断片をクローニングしてその構造決定を進めている。また複数の個体で、類似した再配列パターンを示す例においては、HBV DNA上、あるいはその近傍に組み換えの生じやすいhot spotがあるかどうかを調べている。(この研究は、三菱化学生命科学研・横山峯介先生との共同研究である。)