ABSTRACT 43(2-1)
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ラクトフェリンによるC型肝炎ウイルスの感染防御:池田正徳1, 杉山和夫1, 田中寅彦1, 野崎昭人1,下遠野邦忠2, 齋藤政樹1, 加藤宣之11国立がんセ・研・ウイルス, 2京大・ウイルス研・がんウイルス)
Lactoferrin inhibits hepatitis C virus infection: Masanori IKEDA1, Kazuo SUGIYAMA1, Torahiko TANAKA1, Akito NOZAKI1, Kunitada SHIMOTOHNO2, Masaki SAITO1, Nobuyuki KATO1 (1Virol. Div., Natl.Cancer Center Res. Inst., 2Dept. Viral. Oncology, Inst. Virus Res., Kyoto Univ.)

【目的】抗HCV剤の開発を、妨げている原因の一つに、抗ウイルス活性を評価できる培養細胞系の確立が難しいことがあげられる。昨年の、本学会でヒト肝細胞由来のPH5CH8細胞が、HCVに対して感受性を示すことを報告した。今回、PH5CH8細胞を用いて、抗HCV活性の評価のできるシステムを確立し、ミルク中に高濃度に含まれるラクトフェリンが、PH5CH8細胞へのHCVの感染を防御できることを見い出したので報告する。
【方法】牛ラクトフェリン(bLF)を、HCV陽性血清1B-2と混合して、細胞に添加し、37℃で90分間保温した。感染後8日目の細胞よりRNAを抽出しRT-PCRにてHCV RNAを検出した。bLF以外に、ヒトラクトフェリン(hLF)、牛トランスフェリン(bTF)についても検討した。また、血清1B-2以外のHCV陽性血清(1B-3, 2A-2)に対するbLFの効果についても検討した。 
【結果と考察】bLFをHCV陽性血清と混合したものを、PH5CH8細胞に添加した場合、感染後8日目の細胞からHCV RNAは、検出されなかった。また、hLFでも同様に抗HCV効果が認められたが、bTFでは抗HCV効果は、認められなかった。bLFは、異なるHCV陽性血清に対しても感染防御効果を認めた。ラクトフェリンは、新しい抗HCV剤の候補になりうるものと思われる。