ABSTRACT 77(4-1)
NOによるVEGF遺伝子転写活性化機構の解析:木村秀生1,倉島由紀子1,小倉勤1,陳勁松1,橋本耕一1,幕内雅敏2,江角浩安1(1国立がんセ・研・支所・がん治,2東大・医・二外)
Characterization of mechanism of VEGF gene transcriptional activation by NO: Hideo KIMURA1, Yukiko KURASHIMA1, Tsutomu OGURA1, Keishu CHIN1, Koichi HASHIMOTO1, Masatoshi MAKUUCHI2, Hiroyasu ESUMI1 (1Inv. Treat. Div., Natl. Cancer Ctr. Res. Inst. East, 2Second Dept. of Surgery, Univ. of Tokyo)
(目的)我々はNitric Oxide (NO)が血管内皮増殖因子(VEGF)遺伝子を発現誘導することを明らかにした。今回はその転写制御に関わるcis-elementを明らかにすることを目的とした。
(方法)ヒトVEGF遺伝子promoter およびそのdeletion mutantをluciferase遺伝子をもつreporter plasmidに組み込んだ。これをA-172 human glioblastoma細胞に導入し、NOを発生するS-nitroso-N-acetyl-D,L-penicillamine (SNAP)での誘導性を調べた。対照として低酸素(1%酸素)での培養を行った。さらに、hypoxia responsive element (HRE)を中心とした60-300 bpをHSV-TK promoterとluciferase遺伝子を含むplasmidに組込み、同様に転写活性を調べた。
(結果)VEGF遺伝子promoter領域のうちHREを含む約220 bpの欠損ではNOによる転写誘導能は持たなかった。HREまたはこれに隣接する領域 (ancillary sequence)のいずれかに変異があるものもNOによる活性化が消失した。低酸素の場合も同様の結果が得られた。SNAP処理の際にguanylate cyclase阻害剤を投与するとNOによる転写活性化は著明に低下したが、低酸素による活性化に変化はなかった。これらはNOによるHIF-1の活性化とよく一致した。
(考察)低酸素とNOによるVEGF遺伝子制御のcis-elementは共通であったが、NOによる転写誘導はcGMP依存性であり、低酸素とは異なるシグナル伝達により活性化されることが明らかになった。