ABSTRACT 82(4-1)
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Thioredoxinプロモーター上の酸化ストレス反応配列結合蛋白の解析: 増谷 弘,  山口佳美, 淀井淳司(京大・ウイルス研)

Analaysis of binding proteins to the oxidative responsive element in the thioredoxin promoter: Hiroshi MASUTANI, Yoshimi YAMAGUCHI, Junji YODOI (Inst. for Virus Research, Kyoto Univ.)

【目的】酸化ストレスは細胞にDNA障害などの様々な生物反応を引き起こす。生体は過度の酸化ストレスに対する防御機構を備え、その破綻が細胞癌化の要因となっていることが考えられ、酸化ストレスに対する生体防御機構を解明することは重要であると思われる。生体防御蛋白thioredoxin (TRX)は酸化ストレスを防護する作用および癌抑制遺伝子p53の転写活性を増強する作用を持ち、一方、過酸化水素、紫外線、放射線照射、ヘミン投与などの様々な酸化ストレスで誘導され、またTRXのプロモーターには酸化ストレスに反応するユニークな配列が存在することを報告してきた。今回、TRXプロモーターの酸化ストレスによる誘導の分子機構を解析することにより、酸化ストレスに対する生体防御機構を明らかにすることを目的とした。
【結果】1) TRXプロモーター上の酸化ストレス反応配列結合蛋白をヒトT細胞白血病細胞株Jurkatの核抽出液を用いてゲルシフトアッセイにより解析したところ、特異的な結合を認めた。さらにそのDNA結合配列への結合を指標としてDNAアフィニティカラムによる精製により分子量70kD、90kDの結合蛋白を新たに同定した。2)TRXプロモーターを上流につないだルシフェラーゼ発現ベクター遺伝子を用いてルシフェラーゼアッセイを行った。ヒトerythrolekemia細胞株K562細胞では鉄ヘム化合物ヘミンによりTRXは誘導され、その主な反応配列は上記酸化ストレス反応配列より下流の約100塩基に含まれることが判明した。
【結論】TRXは様々な酸化ストレスにより誘導される機構については少なくとも酸化ストレス反応配列およびその結合蛋白を介する機構、ヘミンに反応する配列を介する機構の異なった回路が存在することが明らかとなった。