ABSTRACT 86(4-2)
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AML1-MTG8により発現の変化する遺伝子のdifferential displayによる解析:嶋田博之,中村左和子,勝利恵子,岩佐光輝,北林一生,市川 仁,大木 操(国立がんセ・研・放研)

Analysis of Genes Whose Expression Is Altered by the AML1-MTG8 Fusion Transcription Factor Using Differential Display: Hiroyuki SHIMADA, Sawako NAKAMURA, Rieko KATSU, Mitsuteru IWASA, Issay KITABAYASHI, Hitoshi ICHIKAWA, Misao OHKI (Radiobiol.Div., Natl.Cancer Ctr.Res.Inst.)

t(8;21)転座型白血病ではAML1-MTG8キメラ遺伝子が形成され、その融合遺伝子産物はAML1による転写活性をドミナントに抑制する。 AML1-MTG8はIL-3依存性マウス骨髄系細胞株L-GのG-CSFに依存した増殖を支持し、好中球への分化を阻害する。さらに、この分化阻害はAML1遺伝子の主要産物AML1bの共発現により抑制されることから、顆粒球系細胞の分化においてAML1-MTG8がAML1の機能を抑制することが白血病発症の要因と考えられる。一方、転写活性化領域を欠くAML1aをCMVのプロモーターを用いてL-Gに大過剰に発現させると、AML1-MTG8を発現させた場合とは異なり、G-CSF存在下での増殖は支持されるが分化は阻害されない。AML1-MTG8をSV40のプロモーターを用いてL-Gに発現させることにより発現の変化する遺伝子をdifferential display法を用いて解析したところ、AML1-MTG8により発現が誘導されるものを20種、抑制されるものを5種、計25種の独立な遺伝子断片を単離した。これらの遺伝子断片について、AML1-MTG8の欠失変異体およびAML1aによる発現の変化を検討し分類した。その結果、解析し終えた19種の遺伝子断片のうち14種は、形質転換能のある変異体によってAML1-MTG8による場合と同様の発現変化が認められ、形質転換能のない変異体によっては発現の変化が認められなかった。これらの14種の遺伝子断片うち、9種はAML1aとAML1-MTG8によって同様の発現変化を示した。これらは増殖支持に関与する可能性を示唆する。また、残りの5種はAML1aによって発現の変化が認められずAML1-MTG8によってのみ特異的な発現変化を示したため、分化阻害に関与する可能性があると考えられた。現在、これらの遺伝子をL-Gに発現させ、増殖分化に対する影響を検討している。