ABSTRACT 93(4-2)
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膵がんにおけるPTI-1遺伝子の発現:大浪俊平、松本伸行、中野雅、杉村隆、寺田雅昭、吉田輝彦、(国立がんセ・研・共通実験室、分子腫瘍)

Expression of the PTI-1 gene in pancreatic cancer : Shumpei OHNAMI, Nobuyuki MATSUMOTO ,Masaru Nakano,Takashi SUGIMURA ,Masaaki TERADA and Teruhiko YOSHIDA(Central RI Labo., Genetics Div., Natl. Cancer Center Res. Inst.)

【目的】膵がんでは特徴的に高頻度に、かつがん化の初期よりK-rasの点突然変異が認められる。膵がんでは他の臓器のがんでは見られないような特徴的な遺伝子群が、K-ras遺伝子活性化に伴って活性化又は非活化されている可能性がある。そのような遺伝子の同定・解析は、膵がんにより特異的な遺伝子診断や、治療法の開発を図る上で重要な意味を持つ。我々はK-ras遺伝子点突然変異を持つ膵がん細胞株AsPC-1にK-rasアンチセンスRNA発現プラスミドを導入した細胞において発現が変化する遺伝子をDifferential Display(D.D)法により検索し、PTI-1遺伝子の発現が抑制されていることを見出した。今回、PTI-1遺伝子の膵がんにおける発現を検討した。【方法】膵がん5症例のがん部、非がん部および膵がん細胞株7株についてRT-PCRを行い、β-actinを内部コントロールとして半定量的に解析した。【結果】PTI-1遺伝子はAsPC-1細胞で発現を認め、アンチセンスRNA導入株では発現が抑制されている。しかしAsPC-1以外のK-ras遺伝子点突然変異を伴う3種類の細胞株を含む6種類の膵臓がん細胞株では発現を認めなかった。一方、膵臓がん手術材料においてはPTI-1の明らかな発現量増加を5例中1例に認めた。PTI-1はK-rasの下流に属する可能性があるが、特定の膵臓がんでのみ活性化されており、がんの発生よりも、がんの進展やがん形質の修飾に関与していると考えられた。