ABSTRACT 121(4-5)
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ヒト肺小細胞癌におけるp27KIP1高発現の機序とその意味:増田彰,谷田部恭,近藤柾史,高橋利忠,高橋隆(愛知がんセ・研・超微形態、同・免疫、愛知がんセ・病・臨床病理)

Mechanism and meaning of high expression of p27KIP1 in human small cell lung cancer: Akira MASUDA1, Yasushi YATABE3, Masashi KONDO1, Toshitada TAKAHASHI2, Takashi TAKAHASHI1 (1Lab. Ultrastruct. Res., 2Lab. Immunol.,Aichi Cancer Cntr. Res. Inst.; 3Dept. Pathol. & Clin. Lab., Aichi Cancer Cntr. Hosp.)

【目的】我々はヒト肺非小細胞癌においてp27KIP1の発現に低下がみられ予後不良因子として有用である一方、小細胞癌においては正常肺上皮細胞に比し高い発現が検出される事を報告した(Yatabe et al., Cancer Res. 58, 1042, 1998)。今回は、高い増殖能を持つ小細胞癌におけるCDK阻害因子であるp27KIP1の高発現という一見矛盾する結果に着目し、その機序と意味を明らかにすることを試みた。【方法】肺小細胞癌細胞株4株並びに対照として正常肺上皮細胞株(HPL1D,BEAS2B)を用い、定常状態におけるp27KIP1の合成速度と分解速度の測定、p27KIP1発現と細胞周期との関係の検討をすすめた。【結果】小細胞癌株におけるp27KIP1の合成速度は正常肺上皮細胞株に比しむしろ低かったが、分解速度はさらに著しく低く高発現の要因と考えられた。また、p27KIP1陽性細胞は[3H]チミヂンによる1時間ラベルでは全く標識されず、48時間ラベルでもあまり標識されなかった。一方、陰性細胞は約30%が1時間でラベルされ、時間とともにその割合はさらに増加した。【結論】従来比較的均一な集団と信じられてきた小細胞癌が、高いp27KIP1の発現を示す細胞回転を停止した集団とp27KIP1陰性の短い細胞周期の集団の2つからなることが示唆された。2つの集団の相互関係及びp27KIP1の発現と神経内分泌細胞分化やアポトーシスとの関係についても言及する予定である。