ABSTRACT 126(4-5)
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染色体の著しい倍数化をおこすショウジョウバエの突然変異体の分離とその原因遺伝子のクローニング: 井上喜博1、西本義男1、山口政光1, David M. GLOVER2, 松影昭夫1愛知がんセ研生物、2Univ. of Dundee, UK)

Isolation of a novel mitotic mutant, orbit resulting in a production of highly polyploid cells and molecular cloning of the responsible gene. : Yoshihiro H. INOUE1, Yoshio NISHIMOTO1, Masamitsu YAMAGUCHI1, David M. GLOVER2, Akio MATSUKAGE1 (1Aichi Cancer Ctr. Res. Inst., 2Univ. of Dundee, UK)

がん細胞には、染色体の倍数化、異数化あるいは染色体構造の異常がしばしば観察されるが、細胞のがん化に伴い、細胞分裂の制御が異常となっていると考えられる。我々は、動物細胞の分裂に関わる新規遺伝子の同定とその機能解析をおこなうため、ショウジョウバエをモデル系に選んだ。約3千系統におよぶ多数のショウジョウバエ突然変異体の中から、初期胚の核分裂サイクルにおいて異常な分裂後期像が観察される変異体を8系統(7遺伝子座)と染色体構築の異常を示す変異体を3系統(2遺伝子座)分離した.このうちorbit (orb)変異体では、著しい倍数化、染色体の過凝縮、分裂後期像の頻度の低下が観察された. orb変異体の細胞分裂を間接蛍光抗体法により観察したところ、M期に中心体が両極に移動できないことにより単極紡垂体微小管が形成された分裂細胞が観察された。さらに細胞質分裂の欠損により生じた二核細胞も認められた.倍数化は、この両方の欠損による可能性が考えられる.orb遺伝子をトランスポゾンタギング法によりクローン化した。その一次構造および抗体を用いたORBタンパクの細胞内局在の結果を総合すると、orb遺伝子産物は、約170KDaの新規微小管結合タンパクである可能性が示唆された。