ABSTRACT 127(4-5)
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ヒトChk1キナーゼの細胞周期依存的発現と活性制御:金子葉子,池田恭治,中西真 (国立長寿研・老年病)

Cell cycle dependent regulation of human Chk1 kinase activity : Yoko KANEKO, Kyoji IKEDA, Makoto NAKANISHI (Dept. of Geriat. Res., Natl. Inst. Long. Sci.)

【目的】DNAに傷害が生じると、チェックポイント機構により細胞周期が停止し、傷害を修復して細胞は遺伝子の恒常性を保つ。多くのガン細胞で遺伝子の突然変異、instabilityがみられることから、チェックポイント機構は発ガンにも関与していると考えられる。そこで、分裂酵母のDNA傷害後のチェックポイント機構に重要な役割を持つChk1キナーゼのヒトホモローグをクローニングし、ヒトChk1キナーゼの役割を解析した。
【方法】G0期に同調させたヒト正常線維芽細胞(MJ90)を血清刺激して経時的にmRNAおよびcell lysateを調製し、ヒトChk1キナーゼの発現を解析した。さらに、DNA傷害時のChk1キナーゼの変化を検討した。
【結果】1.ヒトChk1キナーゼのmRNAおよびタンパク質の発現はS期からM期にかけて特異的であり、そのキナーゼ活性も同時期にみられた。また、ヒトChk1はin vitroでCdc25Cの216番目のセリン(S216)をリン酸化し、38番目のリジンをメチオニンに置換した変異体(K38M)はキナーゼ活性を示さなかった。 2.UV、X-ray等によりDNAに傷害が生じてもヒトChk1はリン酸化等のタンパク質修飾を受けず、キナーゼ活性にも変化が認められなかった。
【結論】哺乳動物細胞においては、Chk1キナーゼは細胞周期依存的な発現制御によりその活性が制御されており、S期からM期にかけてCdc25CのSerine216(S216)をリン酸化していると推察された。