ABSTRACT 130(4-5)
細胞質分裂期におけるグリアフィラメント(GFAPフィラメント)リン酸化の生理的役割:安井善宏1,稲垣直之2,中村英夫3,佐谷秀行3,稲垣昌樹1(1愛知がんセ・研・生化,2奈良先端大・細胞内情報,3熊本大・医・腫瘍)
Physiological role of phosphorelation of glial filaments during cytokinesis : Yoshihiro YASUI1, Naoyuki INAGAKI2, Hideo NAKAMURA3, Hideyuki SAYA3, Masaki INAGAKI1 (1Lab. of Biochem., Aichi Cancer Center Research Inst., 2Div. of Signal Transduction, NAIST, 3Dept. of Tumor Genet. Biol., Kumamoto Univ.)
(目的)我々は、中間径フィラメント(IF)が、細胞内シグナル伝達系や細胞増殖に関与する種々のキナーゼによってリン酸化され、その構築の制御がなされていることをin vitroで明らかにした。さらに、これらIF蛋白質の各種キナーゼによるリン酸化の状態をそれぞれ特異的に認識する抗体群を作製し、細胞周期における IF蛋白質のリン酸化とそれを遂行するキナーゼについて数多くの知見を得てきた。この過程で、細胞分裂前期にはCdc2キナーゼが、細胞分裂後期にはCFキナーゼ/Rhoキナーゼが、IF蛋白質の特異部位のリン酸化を遂行することが明らかとなった。今回我々は、この細胞分裂期におけるIF蛋白質の特異部位におこるリン酸化の生理的意義を明らかにするため、種々のキナーゼによるリン酸化部位のセリン/スレオニン残基をアラニン残基に置換したIF蛋白質の変異体を細胞に導入し、その表現型を解析した。
(結果及び考察)CFキナーゼ/Rhoキナーゼのリン酸化部位に変異を導入したGFAPからなるフィラメントでは、細胞質分裂が終了しているにも関わらず、フィラメントの断裂・分配が生じず、二つの娘細胞間に特徴的なbridge-like構造を形成した。一方、正常-GFAP、Cdc2キナーゼや他のキナーゼのリン酸化部位に変異を導入したGFAPからなるフィラメントは、細胞分裂の進行に伴って正常に娘細胞へ分配された。この知見は、細胞質分裂期のCFキナーゼ/RhoキナーゼによるGFAPのリン酸化が、フィラメントの娘細胞への等分配に必須な役割を果たしていることを示すものと考えられる。