ABSTRACT 131(4-5)
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膵癌細胞株におけるG2/M check pointの解析: 菅沼正司1,2、河邊拓己1、衣斐寛倫1、船曵孝彦2、岡本尚11名市大・分子医研・分子遺伝、2藤田学園・医・外)

Analysis of G2/M check point mechanism in pancreatic carcinoma cell lines: Masashi SUGANUMA1,2, Takumi KAWABE1, Hiromichi EBI1, Takahiko FUNABIKI2, Takashi OKAMOTO1 (1Dep of Molecular Genetics. Nagaya City Univ. 2Dep of Surg, Fujita Health Univ )

[目的]G2 check pointにはp53の関与が報告されているが、p53が異常をきたした場合のG2 check point機構については不明である。我々はヒト膵癌細胞株であるMIA PaCa2 とPANC1 細胞において、放射線照射によるDNA傷害時のG2 check pointについて検索した。
[結果及び考察]MIA PaCa2は放射線照射により細胞周期はG2期に停止したが、PANC1では放射線照射によっても細胞周期は停止しなかった。両細胞株においてRad9, Chk1, p21, 14-3-3σ, Cdc25CのmRNAの発現及びCdc2-Y15のリン酸化の有無について調べた。MIA PaCa2ではChk1およびCdc 25C のmRNAの発現を認めたが、p21, 14-3-3σは発現していなかった。G2期停止の際にはCdc25Cはリン酸化され14-3-3σと結合するが、MIA PaCa2では14-3-3σが発現していないにも拘わらず細胞周期がG2期に停止し、14-3-3σ以外の機構の関与が考えられた。一方PANC1では細胞周期が停止しないのにも拘わらずChk1, p21, 14-3-3σ, Cdc25CのmRNAの発現と、Cdc2-Y15のリン酸化を放射線照射前後ともに認めた。以上の所見はp53が異常をきたした癌細胞でのG2 check pointが、既知の機序では説明できないことを示しており、興味深い所見と思われたので報告する。