ABSTRACT 145(4-7)
マウスEAT遺伝子の単離と胎児性癌細胞ならびに胚性幹細胞の分化初期における発現:大喜多 肇, 梅澤 明弘, 熱海 徹, 鈴木 淳, 佐野 誠, 秦 順一(慶大・医・病理)
Cloning of murine EAT and its up-regulation at an early stage of differentiation of murine embryonal carcinoma cells and embryonic stem cells.:Hajime OKITA, Akihiro UMEZAWA, Atsushi SUZUKI, Toru ATSUMI, Makoto SANO and Jun-ichi HATA (Dept. of Pathology, Keio Univ.)
[背景] EAT遺伝子は、ヒト胎児性癌細胞(EC細胞)NCR-G3のレチノイン酸(RA)による分化初期に発現が上昇する遺伝子として単離された。bcl-2 familyに属し、アポトーシス抑制作用を有する。EC細胞の分化及び初期発生における本遺伝子の機能をより詳細にするため、マウスのEAT遺伝子を単離した。今回,マウスEC細胞,胚性幹細胞(ES細胞)での発現動態を解析した.
[方法および結果] マウス胎児8.5日のcDNA libraryからマウスEAT遺伝子を単離した。マウスEATはヒトEATと76%のアミノ酸配列のホモロジーを有し、特に、機能上重要とされるBH1、BH2、BH3ドメインでは、ほぼ100%のホモロジーを有する。又、3'非翻訳領域に、immediate-early geneにしばしば存在するIRBモチーフを認めた。マウスEC細胞(F9、PCC3)およびマウスES細胞をRAで処理し、EATの発現の変動を検討した。EATの発現はRA未処理のEC細胞、ES細胞では低いが、処理後2時間後から24時間後まで誘導され、その後低下した。ヒトEC細胞においてもRAによる分化初期に本遺伝子が誘導されることとあわせ、EATが、EC細胞、ES細胞のRAによる分化初期のアポトーシスを抑制することにより、その分化を支持していると考えられる。現在、マウス発生過程でのEATの発現を解析中である。