ABSTRACT 150(4-7)
一酸化窒素によるFas誘導アポトーシスの抑制:小倉 勤, 立道昌幸, 江角浩安(国立がんセ・研・支所・がん治)
Suppression of Fas-mediated apotosis by nitric oxide: Tsutomu OGURA, Masayuki TATEMICHI and Hiroyasu ESUMI (Investigative Treatment Div. Natl. Cancer Ctr. Res. Inst. East)
[目的]FasリガンドーFasシステムによるアポトーシス誘導の機能異常は、免疫疾患や発がん発生・進展に深く関わっている。我々は、アポトーシス実行を担うシステインプロテアーゼカスケードの最終段階に位置するカスパーゼ3の試験管内活性化および活性自身を阻害することを見いだした。本研究では、Fas刺激アポトーシスのNOによる抑制効果とそのメカニズムを解析した。[方法] ヒトTリンパ球由来Jurkat細胞を抗Fas抗体(500 ng/ml)で処理した。NOの効果は、NO供与体S-nitroso-N-acetyl-DL-penicillamin (SNAP; 0.5 mM)処理により解析した。アポトーシス誘導は、染色体DNAの断片化、蛍光標識カスパーゼ3特異的基質から遊離した蛍光強度の測定によるカスパーゼ3活性誘導を指標とした。カスパーゼ3タンパク質はウエスタンブロット法により解析した。[結果]抗Fas抗体処理24時間後のJurkat細胞でのカスパーゼ3活性誘導および染色体DNAの断片化はSNAP同時処理により抑制された。抗Fas抗体とSNAP同時処理細胞では、前駆体カスパーゼ3(p32)から酵素N端のプロドメインが付加したp20+p12を生成し、活性体(p17+p12)の生成を阻害した。同様の活性化阻害は、抗Fas抗体とカスパーゼ3特異阻害ペプチドの同時処理でも認められた。[考察]生体内で生成されるNOは、Fas刺激によるアポトーシス誘導の抑制因子としての役割を担っていると考えられる。そのアポトーシス抑制機構は、カスパーゼ3阻害剤と同様にカスパーゼ3活性化の阻害による活性体カスパーゼ3生成の抑制が示唆された。