ABSTRACT 153(4-7)
 一般演題一覧 トップ 


ASK1抑制性制御機構の解析:斉藤正夫1,2、西頭英起1,2、宮園浩平1、一條秀憲1,21癌研・研・生化、2東医歯大・歯・第二理工)

Analysis of inhibitory mechanism for ASK1. Masao SAITOH1,2, Hideki NISHITOH1,2, Kohei MIYAZONO1, Hidenori ICHIJO1,2 (1Dept. of Biochem., Cancer Institute, Dept. of Biomaterials sci., 2Tokyo Med. Dent. univ.)

我々は、これまでに新規のMAPキナーゼファミリー分子(MAPKKK)であるASK(Apoptosis Signal regulating Kinase)1の機能を解析し、ASK1がTNF-αや様々な物理化学的ストレスにより活性化されるとともに、古典的MAPキナーゼカスケードとは異なるカスケードを構成し、アポトーシスのシグナル伝達に関与することを解明してきた。今回、ASK1に結合するタンパク質を酵母のtwo-hybrid法により解析したところ、そのひとつとして細胞内酸化還元(レドックス)制御に深く関与するチオレドキシンを同定した。チオレドキシンとASK1の結合特性を検討したところ、チオレドキシンはASK1のN末側に結合し、還元型チオレドキシンのみがASK1と結合し、酸化型チオレドキシンや活性中心を変異させたチオレドキシンはASK1と結合できないことが判明した。また、ASK1の活性に対する作用を検討した結果、ASK1の活性ならびにアポトーシスのシグナル伝達作用を抑制することが明らかとなった。さらにチオレドキシンの結合領域であるN末側を欠失させたASK1が構成的活性化となることからも、チオレドキシンがASK1の抑制因子として機能している可能性が強く示唆された。これらの結果はチオレドキシン・ASK1系がレドックスシグナルをキナーゼカスケードのシグナル伝達系へ変換するための、ひとつのスイッチ機構として働いていることを示唆するものと考えられる。