ABSTRACT 158(4-8)
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急性骨髄性白血病におけるMAPキナーゼスーパーファミリーとSTAT経路の恒常的活性化とその意義: 唐渡雅行1、飯田浩充1、谷本光音1、清井仁2、直江知樹2、斎藤英彦1 (1名大・医・一内、 2名大・医・難治感染)

Constitutive activation of MAP kinase superfamily and STATs pathways : Masayuki TOWATARI1, Hiroatsu IIDA1, Mitsune TANIMOTO1, Hitoshi KIYOI2, Tomoki NAOE2, Hidehiko SAITO1 (1First Dept. of Int. Med., 2Nagoya Univ. Sch. Med.)

急性骨髄性白血病(AML)におけるMAPキナーゼスーパーファミリーとSTAT経路の恒常的活性化の実体とその意義についてはほとんど不明のままであった。多数例のAMLで解析することによりこれら2つのMajor signal cascadesの活性化の頻度とクロストークの可能性、予後因子の可能性、Ras変異との相関についての知見を得て、AMLにおける意義について検討することを目的とした。まず、多数例の患者由来の白血病細胞においてMAPキナーゼのリン酸化、活性化の有無を検討した。100例を超すAMLの約50%にMAPキナーゼ(ERK1/ERK2)の恒常的活性化を認めたが、同一プロトコールによる治療成績からは予後には影響を与えなかった。一部の症例でJNKあるいはp38の恒常的リン酸化が強く認められることを見い出した。JNKのリン酸化とp38のリン酸化の間には相関が認められるも、JNKあるいはp38と古典的MAPキナーゼ(ERK1/2)との間には関連を認めなかった。これらのAMLにおいてSTAT蛋白(STAT3/STAT5)の恒常的活性化(リン酸化)を検討し、約70%に活性化を認めたが、MAPキナーゼとの相関はみられず、実際のAML細胞におけるシグナル経路の活性化の多様性が示唆された。一方、実験モデルでの知見とは大きく異なり、Rasの突然変異のあるAML細胞において必ずしもMAP キナーゼの活性化を認めなかった。これは、AMLにおけるRas変異の持つ意義を考える上で興味深い。