ABSTRACT 163(4-8)
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子宮頚部多段階発癌過程におけるTGFβ1に対する感受性喪失機構の解析:河口徳一1, 弓立環2,4, 加藤光保3, 今村健志3, 阪埜浩司2,5, 平井康夫6, 宮園浩平3, 北川知行1, 野田哲生2,7 (1癌研・研・病理、2細生、3生化、6婦、4東京医大・産婦、5慶大・産婦、7東北大・医・分子遺伝)

Mechanisum of the loss of TGFβ1 sensitivity in the process of multistep carcinogenesis of uterine cervical carcinoma:Tokuichi KAWAGUCHI1, Tamaki YUDATE2,4, Mitsuyasu KATO3, Takeshi IMAMURA3, Koji BANNO2,5, Yasuo HIRAI6, Kouhei, MIYAZONO3, Tomoyuki KITAGAWA1, Tetsuo NODA2,7 (1Dept. Patho., 2Dept.Cell Biol., 3Dept.Bio Chem. 6Dept.Gynecol., Cancer Inst. 4Dept.Obstet Gynecol.,Tokyo Med Coll., 5Dept.Obstet Gynecol.Keio Univ.,Dept.Mol.Genet.,Tohoku Univ.Sch.Med.)

【目的】TGFβは殆どの正常上皮細胞に対して増殖抑制作用を有する.しかし癌細胞株のいくつかはこの細胞増殖抑制作用に抵抗性を示すことが知られている.この機構の解明を目的として子宮頚部病変部由来細胞株(前癌病変由来株6株,上皮内癌由来株3株,浸潤癌由来株6株)を用いて解析を行った.【結果】浸潤癌由来株6株全てでTGFβ1に対する反応性の喪失がみられた.TGFβ I型,II型受容体(RI,RII)の発現を全株について調べたところ浸潤癌由来株の2株で膜表面での発現が消失していた.そのうち1株ではmRNAの発現はみられたが,この株はRER陽性であり突然変異がRIIのExon3と5に存在した.他の1株はRER陰性でRIIのExon3の突然変異とExon4から7を含む領域のhomozygous deletionがみられ, mRNAの発現もみられなかった.この2株で見られた突然変異は原腫瘍においても確認された.つぎに全ての細胞株でSmad2と4の遺伝子解析を行ったところ,これらの遺伝子は共にそのmRNA及び蛋白レベルでは全株に発現がみられたが,3株でSmad2と4を含む領域のLOHがみられた.【結論】TGFβの細胞増殖抑制作用に非感受性となる機構には受容体に異常がみられる場合と細胞内のシグナル伝達機構に異常がある場合とがあり,その機構は一様でないことが示唆された.