ABSTRACT 164(4-8)
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変異Smad3によるTGF-βシグナルの抑制:加藤光保,後藤大輔,八木健,井上博文,川畑正博,宮園浩平(癌研・生化学部)

A single missense mutant of Smad3 inhibits activation of both Smad2 and Smad3, and has a dominant negative effect on TGF-b signals: Mitsuyasu KATO, Daisuke GOTO, Ken YAGI, Hirofumi INOUE, Masahiro KAWABATA, Kohei MIYAZONO (Dept. of Biochemistry, Cancer Institute, Japanese Foundation for Cancer Research)

TGF-βシグナルを伝達するシグナル特異的Smad蛋白としてSmad2とSmad3が知られている。このふたつのファミリー分子のうち、Smad2は大腸癌と肺癌で変異が報告されているが、Smad3は増殖抑制シグナルに重要であると報告されているにもかかわらず、癌細胞での変異は認められていない。今回、我々は細胞増殖抑制シグナルにおけるSmad3の機能を解析することを目的として大腸癌細胞でSmad2に見られたSmad2D450E変異と相同の変異をSmad3に導入したSmad3D407Eを作成し、その機能を解析した。Smad3D407Eは、それ自身がTGF-βシグナルによってリン酸化されず、さらに共存する野性型のSmad3とSmad2のリン酸化も抑制し、TGF-βシグナルによる p3TP luxレポーター遺伝子の発現をドミナントに抑制した。また、この変異Smad3を発現させた角化細胞株は、その発現強度に比例してTGF-βによる増殖抑制反応が低下した。この抑制機能はシグナル特異的でBMPシグナルによるSmad1のリン酸化は抑制されなかった。シグナル特異的な抑制の機序として、変異Smad3はTGF-β I 型レセプターに結合するが解離しにくいため野性型Smad蛋白の結合部位を塞ぐことが示唆された。以上よりSmad3の変異体もTGF-βによる増殖抑制反応に抑制的に作用しうることが示された。