ABSTRACT 166(4-8)
メルリンとRho GDIとの相互作用:前田賢人1,4,月田早智子2,佐々木卓也3,高井義美3,今村正之4,月田承一郎1 (1京大・医・分子細胞情報,2京大・医短,3阪大・医・分子生理化学,4京大・医・腫瘍外科)
Merlin is involved in Rho-signaling by binding to Rho GDI and plasma membrane:Masato MAEDA1,4,Sachiko TSUKITA2,Takuya SASAKI3,Yoshimi TAKAI3,Masayuki IMAMURA4, Shoichiro TSUKITA1 (1Dept.Cell Biol.,Fac. Med.,Kyoto Univ.,2Coll. Med.Tech.,Kyoto Univ.,3Dept.Mol.Biol.&Biochem.,Osaka Univ. Med.Sch., 4Dept. Surg&Surg Basic Sc.,Fac. Med.,Kyoto Univ.)
神経線維腫症II型(NF2)の原因遺伝子産物であるメルリン(merlin)は、ERM(ezrin/radixin/moesin )ファミリーの蛋白質と相同性が高い癌抑制遺伝子産物である。ERM蛋白質は、N末端側でCD44などの細胞膜蛋白質と結合し、C末端側でアクチンフィラメントと結合することにより、アクチンフィラメントと細胞膜をクロスリンクする。 我々はこれまで、ERM蛋白質のクロスリンカーとしての機能が低分子量G蛋白質 Rhoにより制御されることを示してきた。すなわち、 Rhoの制御因子であるRho GDI(Rho GDP dissociation inhibitor)が細胞膜画分のERMに結合することにより、Rhoが細胞膜とアクチンフィラメントの結合部位で活性化される。一方で、 活性化型Rhoの作用により、 ERM蛋白質がクロスリンカーとして活性化される。今回われわれは、メルリンが、ERM蛋白質を介したアクチンフィラメント - 細胞膜間の結合をいかに制御するかについて検討を行った。メルリンはアクチンフィラメントと細胞膜の結合部位に濃縮し、 ERM蛋白質と似た細胞内分布を示すが、 ERM蛋白質と異なり、可溶性画分にはほとんど存在しない。また、メルリンはRho GDIに結合するが、その結合様式や結合定数がERM蛋白質の場合と異なる。 これらのメルリンの特徴が、 ERM蛋白質の機能をいかに制御し、癌抑制遺伝子として機能するかについて検討を行った。