ABSTRACT 186(4-10)
高発癌性遺伝病ナイミーヘン染色体不安定症候群の原因遺伝子の単離:田内 広1、松浦伸也1、中村麻子1、坂本修一1、近藤徳子1、磯村 実2、遠藤 暁1、押村光雄3、中村祐輔2、小松賢志1(1広島大・原医研・放射線基礎、2東大・医科研・ゲノム、3鳥取大・医)
Molecular cloning of the Nijmegen Breakage Syndrome gene: Hiroshi TAUCHI1, Shinya MATSUURA1, Asako NAKAMURA1, Shuichi SAKAMOTO1, Noriko KONDO1, Minoru ISOMURA2, Satoru ENDO1, Mitsuo Oshimura3, Yusuke NAKAMURA2, Kenshi KOMATSU1(1Dept. Rad. Biol., RIRBM, Hiroshima Univ, 2Human Genome Center, Tokyo Univ., 3Tottori Univ.)
ナイミーヘン染色体不安定症候群(NBS)は、免疫不全、悪性リンパ腫をはじめとした高発癌性、小頭症、鳥様顔貌などの臨床症状を示す常染色体劣性の遺伝病で、細胞学的には放射線高感受性、染色体不安定性、放射線抵抗性DNA合成などを特徴としており、Ataxia-telangiectashia (AT)のバリアントとされている。我々はこれまでに微小核移入法を用いた放射線感受性相補性試験、患者およびその正常近親者におけるハプロタイプ解析、YACの導入による放射線感受性相補試験によりNBS原因遺伝子を8q21の約800 kbp以下の領域に限局してきた。この最終候補領域についてBAC contigを作製し、約500kbpをカバーする5つのBACクローンについてショットガンシークエンスにより全ゲノムを解読して遺伝子を探索した結果、NBS患者でのみフレームシフト変異を呈する遺伝子、NBSMを単離した。NBSM遺伝子は754アミノ酸をコードする全く新規の遺伝子で、ATの原因遺伝子ATMをはじめ既知のどの遺伝子ともホモロジーを持たないが、その発現はubiquitousであることから生命維持に重要なハウスキーピング遺伝子の一つであると考えられる。