ABSTRACT 208(5-2)
細胞運動におけるアクチン細胞骨格の再編成-RhoとRab低分子量G蛋白質ファミリーによる制御機構:中野克俊,高石健司,今村博司,児玉昌子,佐々木卓也,高井義美(阪大・医・分子生理化学)
Regulation of reorganization of actin cytoskeleton in motile cells by Rho and Rab small G proteins: Katsutoshi NAKANO, Kenji TAKAISHI, Hiroshi IMAMURA, Atsuko KODAMA, Takuya SASAKI, Yoshimi TAKAI (Dept. Mol. Biol. & Biochem., Osaka Univ. Med. Sch.)
がんの浸潤過程では、細胞の接着能が低下し、運動能が亢進する。細胞の接着、運動には、アクチン細胞骨格の再編成とインテグリンなどの細胞接着分子が細胞内小胞輸送によりトランスロケーションすることが必須である。最近、RhoとRab低分子量G蛋白質ファミリーが、それぞれ、アクチン細胞骨格の再編成と細胞内小胞輸送を制御していることが明らかになっている。今回、私共は、細胞運動におけるこれらの低分子量G蛋白質の役割と作用機構について検討した。MDCK細胞にTPAを作用させると細胞運動が引き起こされた。この時、ストレスファイバーと接着斑は一旦消失し、その後再編成された。これらの消失と再編成には、それぞれ、Rhoの不活性化と活性化が必要であった。また、Racの不活性化と活性化はいずれも、これらの再編成を阻害した。一方、すべてのRabファミリーの活性化を阻害するRab GDIを細胞にマイクロインジェクションすると、ストレスファイバーと接着斑の再編成が阻害されたことから、これらの再編成にRabファミリーの活性化が必要であると考えられた。さらに、Rabファミリーのうち、少なくともエンドサイトーシスを制御しているRab5の活性化がこれらの再編成に必要であった。以上の結果から、細胞運動におけるストレスファイバーと接着斑の再編成は、RhoとRab低分子量G蛋白質ファミリーによって協調的に制御されていると考えられた。