ABSTRACT 210(5-2)
Rac1欠損による原始線条体形成不全:杉原一廣1,2,中辻憲夫3,中村健司1,中尾和貴1,橋本龍樹4,大谷浩4,野澤志朗2,饗場篤1,勝木元也1(1東大・医科研・ヒト疾患セ,2慶大・医・産婦,3国立遺伝研・発生工学,4島根医大・解剖)
Aberrant Primitive Streak in Mice lacking Rac1:Kazuhiro SUGIHARA1,2, Norio NAKATSUJI3, Kenji NAKAMURA1, Kazuki NAKAO1, Ryuju HASHIMOTO4, Hiroki OTANI4, Shiro NOZAWA2, Atsu AIBA1, Motoya KATSUKI1 (1Dept. of DNA Biol. and Embryo Engineering., Inst. of Med. Sci., Univ. of Tokyo, 2Dept. of Obstet. and Gynecol.,Sch. of Med., Keio Univ. 3Mamma. Dev. Lab., Natl. Inst. of Genetics. 4Dept. of Anat., Shimane Med. Univ.)
Rac1は、Rho ファミリーの蛋白質であり、アクチンファイバーの重合や再構成ならびに細胞接着を制御していると考えられている。したがって、細胞運動や細胞形態の調節に関わる分子と推定され、癌の浸潤・転移をはじめ、細胞運動の亢進や異常によって起こる様々な疾病にも関与しているものと考えられる。そこで、Rac1の生理機能を解析する目的でrac1遺伝子ノックアウトマウスを作成し、このマウスを用いることにより、Rac1が果たす生体機能について検討した。
ホモ型欠損マウスは胎生致死であり、着床後、E6.5よりE13.5までの胎仔を子宮より摘出し、胎仔もしくは卵黄嚢を用いてDNAを抽出、PCR法によって遺伝子型を決定したところ、Rac1ホモ型欠損マウスは着床後早期に胎生致死であった。さらに組織学的検索によってRac1ホモ型欠損マウスでは三胚葉形成時の中胚葉に、特に異常が認められた。この時期の正常マウス胚では、Rac1が強く発現しており、中胚葉形成に伴う細胞の接着や運動が盛んである。これらの観察結果から、Rac1は胚葉形成過程における細胞接着と運動に重要な役割をしていることが示唆された。