ABSTRACT 214(5-2)
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癌転移関連遺伝子ヒトMTA1 cDNA の単離と消化器癌での発現の検討:藤 也寸志、那波明宏、澤田秀智、國仲慎治、杉町圭蔵九州がんセ・臨研病理、名大・医・産婦、奈良医大・1外、九大・医・2外)

Cloning of human MTA1 cDNA and its expression in gastro- intestinal cancers: Yasushi TOH1, Akihiro NAWA2, Hidetomo SAWADA3, Shinji KUNINAKA1, Keizo SUGIMACHI4 (1Clin. Res. Inst., Natl. Kyushu Cancer Ctr., 2Dept. of Obstet. Gynecol., Sch. of Med., Nagoya Univ., 3Dept. of Surg.I, Nara Med. Univ., 4Dept. of Surg.II, Fac. of Med., Kyushu Univ.)

【目的】我々は高転移性ラット乳癌細胞株で高発現する新しい遺伝子mta1を単離し報告した(J.Biol.Chem. 1994; Gene 1995)。今回、mta1 遺伝子の機能とヒト癌における発現の意義を明らかにするためにヒトmta1 homolog (MTA1)を単離解析し、また消化器癌での発現を検討した。
【方法】ラットmta1 cDNA をプローブとしてヒトmelanoma cDNA library をscreeningした。消化器癌でのMTA1 mRNA の発現はRT-PCR 法で検索した。
【結果と考察】MTA1 cDNAはラットmta1とアミノ酸レベルで95%のhomology を示した。この配列中にはSH3-binding motif、Zinc-finger motif、核移行シグナル、遺伝子発現調節蛋白で見られるSPXX motif などが見られた。さらにアンチセンスオリゴにより時間・濃度依存性にMDA231ヒト乳癌細胞の増殖抑制 が観察された。食道癌・胃癌・大腸癌において約30-40% が非癌部に比して癌部で2倍以上のMTA1 高発現を示し、いずれにおいてもMTA1 高発現と壁深達度や脈管侵襲と間に相関がみられた。最近 mta1/MTA1 にhomology のあるcDNA er1 が Xenopusの発生過程においてFGFにより活性化される転写調節遺伝子として単離された。この様に mta1/MTA1 はシグナル伝達系や転写調節に関わり、浸潤転移に関連する遺伝子であると推定された。