ABSTRACT 216(5-2)
c-kit 癌原遺伝子の生殖系列突然変異による家族性多発性消化管間葉腫瘍の発生:廣田誠一1, 西田俊朗2, 礒崎耕次3, 北村幸彦1(1阪大・医・病理, 2阪大・医・1外, 3阪大・医・2内)
Development of multiple gastrointestinal stromal tumors due to a germ line mutation of c-kit protooncogene : Seiichi HIROTA1, Toshirou NISHIDA2, Koji ISOZAKI3, Yukihiko KITAMURA1 (1Dept. of Pathol., Osaka Univ. Med. Sch., 2Dept. of Surg. I, Osaka Univ. Med. Sch., 3Dept. of Int. Med. II, Osaka Univ. Med. Sch.)
【目的】消化管間葉腫瘍(gastrointestinal stromal tumors; GISTs)はヒト消化管の間葉系腫瘍のうち最も多い腫瘍である。われわれは最近、ほとんどのGISTsがc-kit 遺伝子産物(KIT)9を発現し、そのうちの多くにc-ci遺伝子の傍細胞膜領域に機能獲得性突然変異が存在することを見つけた。GISTs のほとんどは単発性で、腫瘍にのみ c-kit遺伝子の変異がみられるが、今回われわれは、4世代にわたって多発性のGISTs が頻発する家系をみつけたので、この家系の患者に c-kit 遺伝子の生殖系列での機能獲得性突然変異がみられるかどうかについて調べた。
【方法と結果】腫瘍組織の得られた2例から抽出した genomic DNA を調べると、単発性の GISTs にみられたのとは別のタイプの c-kit 遺伝子の傍細胞膜領域における突然変異がみられた。末梢血正常白血球から得られた genomic DNA にも同じ c-kit 遺伝子の傍細胞膜領域における突然変異が存在した。IL-3 依存性増殖を示す前リンパ球培養細胞株Ba/F3は、この変異型 c-kit cDNA を導入されると IL-3 がなくても自律性に増殖するようになり、ヌードマウスに移植すると腫瘍を形成するようになった。
【結論】家族性・多発性 GISTs は c-kit 遺伝子の生殖系列における機能獲得性突然変異を原因とするCancer Syndrome である。