ABSTRACT 229(5-4)
G1/S境界でのラットcdc2プロモーターの発現制御
竹内 新、坪田 芳明、中島 琢磨、小田 鈎一郎 (東京理科大・基礎工・生物工)
Activation of the Rat cdc2 promoter at the G1/S boundary. Arata, TAKEUCHI, Yoshiaki TSUBOTA, Takuma NAKAJIMA, Kinichiro ODA (Dept. of Biol. Sci. and Technol., Sci. Univ. of Tokyo.)
G1/S境界で発現が誘導されるcdc2遺伝子の制御エレメントを解析した結果、ラットcdc2プロモーターの、-276〜-265塩基にエンハンサー配列が、その上流-374〜-360塩基にはそれと類似のサイレンサー配列 AAGTAGTAAAAATAA が存在することが分かった。エンハンサー配列では、中央部のAGの2塩基が欠失している。
細胞抽出液とサイレンサー配列を用い、DNA/蛋白質複合体形成を解析した結果、休止期の細胞では複合体が形成されるが、G1進行と共に形成量は減少し、G1後期では形成されなかった。エンハンサー蛋白質複合体形成はその逆でG1中期より始まり、後期に最大となった。サイレンサーに形成される3種の複合体 I, II, III中、最も移動度の遅い複合体IIIの形成は、エンハンサー配列によって阻害された。両配列に共通の因子が作用することを示唆している。South-Western法により、エンハンサー結合蛋白質cdc2E1、cdc2E2の完全長cDNAを単離したが、これらはサイレンサーにも結合することが分かった。cdc2E1、cdc2E2の発現プラスミドを作製し、サイレンサー、エンハンサーを含むレポーターpcdc2lucおよび、G1サイクリン、cdkの発現ベクターと共にラット3Y1細胞に導入し、細胞をG0期に同調させた後血清刺激し経時的に活性を測定した結果、cdc2プロモーター活性はcdc2E1、cdc2E2と共にサイクリンD、cdk4の発現ベクターを導入した時に著しく抑制されることが分かった。現在cdc2E1、cdc2E2のリン酸化、脱リン酸化とエンハンサー、サイレンサーへの結合との関連を解析中である。