ABSTRACT 232(5-4)
肝細胞がんにおけるp27Kip1の発現低下:回愛民、孫琳、金井弥栄、坂元亨宇、広橋説雄 (国立がんセ・病理)
Reduced p27Kip1 expression in hepatocellular carcinomas: Ai-Min HUI, Lin SUN, Yae KANAI, Michiie SAKAMOTO, Setsuo HIROHASHI (Pathol. Div., Natl. Cancer Center Res. Inst.)
[緒言]Cdkインヒビターp27Kip1と肝発がんとの関わりを明確にするために、肝細胞がんにおけるp27Kip1の発現を検討した。
[材料と方法]切除された肝がん標本21例を対象にし、肝がん組織及び非がん肝組織におけるp27Kip1mRNAの発現をRT-PCR法用いて解析した。
[結果及び考察]p27Kip1 mRNAの発現量は肝がん組織では平均で0.49±0.24 unitであり、非がん肝組織(0.57±0.22 unit)と比べて、有意に低下していた。肝がん組織においてp27Kip1mRNAの発現量と腫瘍の大きさ、分化度との相関は認められなかった。21例中の11例(50%)において非がん肝組織と比べて、肝がん組織ではp27Kip1 mRNAの発現量は低下していた。これらの結果より、p27Kip1発現低下は肝発がんと関与している可能性が示された。われわれは従来肝がんにおけるp16INK4とp21WAF1/CIP1の異常を報告してきた。p16INK4は検討に供した34%の肝がんにおいて転写後調節機構によって不活化されていた。p21WAF1/CIP1の発現は肝がんでは主にp53により調節され、38%の肝がんにおいて発現低下していた。17例の肝がんにおいてはp27Kip1、p16INK4及びp21WAF1/CIP1を検討したが、p27Kip1、p16INK4及びp21WAF1/CIP1の異常を呈したのはそれぞれ9例(53%),8例(47%)
及び9例(53%)であって、15例(88%)で何らかのCdkインヒビターの異常が認められた。三つの分子の異常の間に相関は認められなった。以上よりCdkインヒビターの機能異常は肝がん症例の大部分に関与していると考えられた。