ABSTRACT 234(5-4)
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cdc27Hs/h-nuc(RB結合蛋白・減数分裂後期促進複合体因子(APC)のヒト皮膚発癌における選択的過剰発現とその役割: 中澤久宜1、上田正登2、Mireille Kallassy11IARC 世界保健機構 (WHO)、2神戸大医皮)

Functional roles of cdc27Hs/h-nuc, Rb-binding protein and component of anaphase-promoting-complex, preferentially overexpressing in basal- and squamous-cell carcinomas of the skin : Hisayoshi Nakazawa1, Masato Ueda2, Mireille Kallassy1 (1IARC, WHO, FRANCE, 2 Kobe University)

皮膚基底細胞癌、扁平上皮癌は共にケラチノサイト由来であるが、共通の分子発癌化経路は解っていない。我々は増殖過程の正常と不死化ケラチノサイト(HaCaT細胞)をdifferential dysplay法を用い分析し、不死化ケラチノサイトに選択的に発現しているmRNA中から新たに、RB結合蛋白で、ユビキチンライゲースE3: AnaphasePromotingComplex(APC)因子でもあるcdc27Hs/h-nucを同定した。cdc27Hs/h-nucは正常皮膚では発現せず、皮膚に普遍的に過剰発現していることから、その発現異常は皮膚発癌化の初期段階に関与していると思われる。cdc27Hs/h-nuc の過剰 発現は(1) RBの機能異常をもたらし、下流の転写因子E2Fの転写活性能を上昇し、Sp1, dhfr 等のイフェクター遺伝子群の転写を促進し、細胞増殖を促進する、さらに(2) APC に機能異常をもたらし M期を短縮し、染色体分裂異常を誘導しG1・G2/M両チェックポイント機能低下を引き起こす。cdc27Hs/h-nucが過剰発現する癌では推測どうりSp1, dhfrが過剰発現していた。さらにSp1とsmoh(皮膚癌抑制遺伝子ptchのパートナー)の発現量の高い相関性からcdc27Hs/h-nucとptchシグナル伝達系でのクロスートークの可能性が示唆される。アンチセンス cdc27Hs/h-nuc の発現はHaCaT細胞の増殖能低下を誘導し、RBをノックアウトすると増殖能低下を誘導しないことからも先の仮説の正当性が証明された。cdc27Hs/h-nucゲノムクローンのクローンニングにより全エクソンを決定し、発現調節領域に皮膚癌の主な病因である炎症、紫外線暴露に関与するモチーフを同定した。