ABSTRACT 237(5-4)
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RB遺伝子、p53遺伝子、p21遺伝子の発現調節系による骨肉腫細胞株でのE2F1遺伝子の発現変化の解析:大川恵三1,土田成紀1,神裕道2,河野隆志,横田淳(1弘前大・医・2生化,2同・整形,3国立がんセ・研・生物)

Alteration of E2F1 expression by RB, p53 and p21 induction in an osteosarcoma cell line : Keizou OOKAWA1,Shigeki TSUCHIDA1,Hiromichi JIN2,Takashi KOHNO3,Jun YOKOTA3(1Second Dept. of Biochem. and 2Dept. of Orthop. Srug., Hirosaki Univ. Sch. Med., 3Biol. Div., Natl. Cancer Ctr. Res. Inst.)

RB遺伝子とp53遺伝子のがん細胞における不活化の生物学的意義とその作用機構を明らかにするために、我々はこの二つの遺伝子が不活化しているSaos-2骨肉腫細胞株に各々の遺伝子を導入し、細胞周期関連遺伝子の発現変化を解析している。前回の本大会で、RB結合蛋白である転写因子E2F1蛋白はRBの発現誘導で減少するが、p53では逆に増加し、更にp53の情報伝達系の下流の因子であるp21でも増加することを示した。今回、我々はE2F1mRNAの発現量と蛋白量の関係について解析した。その結果、RBではmRNAも減少したが、p53とp21では蛋白の増加から予想されるmRNAの増加は認めなかった。特にp21ではE2F1蛋白は4〜5倍増加したが、mRNAの増加は2倍以下であり、蛋白の半減期の延長が示唆された。次に、p21の発現誘導量を調節し、E2F1 の発現量と細胞増殖の変化を調べ、増加しているE2F1蛋白の生物学的活性を検討した。その結果、p21発現誘導量に依存してE2F1蛋白は増加するが、細胞増殖はp21発現量に依存して抑制されていた。更に、各遺伝子の発現誘導によるE2F1の転写活性の変化について、E2F1感受性遺伝子の発現変化を解析した。その結果DHFRとB-MYBのmRNAはRBとp53で減少したが、p21では逆に増加していた。また、thymidylate synthase mRNAはRBでのみ減少していた。以上より、RBはE2F1mRNAの発現まで抑制しE2F1そのものの作用を強力に抑制するが、p53はそれとは異なりRB非存在下ではp21を介する作用とは別の作用でE2F1を抑制することが示唆された。