ABSTRACT 240(5-4)
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サイクリン依存性キナーゼによるRB蛋白質の部位特異的リン酸化と細胞分化における意義: 北川雅敏、人見奏恵、東秀明、古川雄祐、平井愛山、中山敬一、田矢洋一九大・生医研・細胞学、国立がんセ研・生物、萬有製薬・つくば研、自治医大・造血、千葉県立東金病院)

Site-specific phosphorylation of RB protein by cyclin-dependent kinases during cell differentiation : Masatoshi. KITAGAWA1, Kanae HITOMI2, Hideaki HIGASHI3, Yusuke FURUKAWA4, Aizan HIRAI5, Kei-ichi NAKAYAMA1 and Yoichi. TAYA2 (1Dept. Mol. Cell. Biol., Med. Inst. Bioreg., Kyushu Univ., 2Biology Div., Natl. Cancer Ctr. Res. Inst., 3Tsukuba Res. Inst, Banyu Pharm., 4Div. of Hemopoiesis, Inst. of Hematology, Jichi Med. Sch., 5Chiba Pref. Togane. Hosp.)

細胞周期のG1期からS期への進行にサイクリン依存性キナーゼ(Cyclin-Cdk)によるRB蛋白質のリン酸化が必要である。R point付近の進行にはCyclin D-Cdk4が主なRBキナーゼとして機能しているが、Cyclin E-Cdk2によるRB蛋白質のリン酸化の生理的意義は不明である。我々はCyclin D-Cdk4およびCyclin A/E-Cdk2の基質特異性を調べ、その結果両者が認識しリン酸化するアミノ酸配列が違うことを明らかにした。今回RB蛋白質上のすべてのリン酸化部位に対する抗体を用いた解析により、Cyclin D-Cdk4によってS780が特異的に、S608が比較的優先的にリン酸化されることを見い出した。一方で、Cyclin E-Cdk2はCyclin D-Cdk4とは違う部位(T356, S612)を優先的にリン酸化することがわかった。また、CMK細胞のTPA処理による巨核球への分化過程でのRB蛋白質のリン酸化を調べたところ、D-type cyclinの発現量及びRB蛋白質のS780およびS608のリン酸化は変動しないのに対し、T356, S612のリン酸化の消失がcyclin Eの減少と呼応した。さらに種々の血液細胞を調べた結果、細胞によってもRB蛋白質のリン酸化部位が異なることがわかった。以上の結果より、細胞種間および細胞の分化過程でRB蛋白質のリン酸化部位が質的に変動することがはじめて明かになった。