ABSTRACT 258(5-6)
癌抑制遺伝子p53はRNA polymerase IIの転写伸長因子ELLの機能を抑制する:忍典昭1,2、前田達哉1、細川眞澄男2、畠山昌則1(1癌研・研・ウイルス腫瘍、2北大・医・癌研病理)
Inhibition of RNA polymerase II elongation factor ELL by p53:1,2Noriaki SHINOBU, 1Tatsuya MAEDA, 2Masuo HOSOKAWA, 1Masanori HATAKEYAMA (1Dept. of viral oncology, Cancer institute, 2Lab. Pathol., Cancer Inst., Hokkaido Univ. Sch. Med.)
ELL遺伝子は、t(11;19)(q23;p13.1)転座型白血病においてMLL遺伝子と融合し、急性骨髄性白血病の発症に関与する遺伝子として同定された。最近、in vitroの生化学的な研究により、ELL遺伝子産物はRNA polymerase IIの転写伸長因子として機能することが知られており、本分子が正常な遺伝子発現の調節に関わることが報告されている。我々は酵母のtwo hybrid法を用いて、ELL遺伝子産物と特異的に結合する分子を検索した。その結果、ELL遺伝子産物は癌抑制遺伝子産物p53と特異的に結合することを見い出した。この結合は哺乳類細胞内でも確認され、ELLの転写活性化domainとp53のoligomerization domainを含むC末の領域が関与することが分かった。in vitroのrun off transcription assayにより、p53遺伝子産物はELLとの結合を介してELLの転写伸長活性を抑制することが示された。さらに、pCMV-およびpSV40-luciferase reporter geneに対するp53の転写抑制効果はELLの過剰発現により抑制された。以上の結果から、p53はELLの転写伸長活性を抑制することにより、RNA polymerase IIによる転写を制御している可能性が示唆された。