ABSTRACT 259(5-6)
癌抑制遺伝子IRF-1,p53欠損による腫瘍発生機構の解析:野澤宏彰1,2,中尾和貴3,,織田恵理1,横地妙子1,勝木元也3,,相澤慎一4,武藤徹一郎 2,谷口維紹1,田中信之1 (1東大院・医・免疫、2同外科、3,東大・医科研・獣医、4熊大・医・遺伝発生)
Analysis on the mechanism of the increased tumorigenesis in IRF-1, p53-double null mice : Hiroaki NOZAWA1,2, Kazuki NAKAO3,, Eri ODA1, Taeko YOKOCHI1, Motoya KATSUKI3,, Shinichi AIZAWA4, Tetsuichiro MUTO2, Tadatsugu TANIGUCHI1, Nobuyuki TANAKA1 (1Dept. of Immunol., Grad. Sch. Med., Univ. of Tokyo, 2Dept. of Surg., Grad. Sch. Med., Univ. of Tokyo, 3,Dept. of DNA Biol. Embryo Engin., Inst. of Med. Sci., Univ. of Tokyo, 4Inst. of Devel., Facul. of Med., Kumamoto Univ.)
個体の腫瘍発生には、種々の遺伝子異常の蓄積が関わるとされている。IRF-1、p53両遺伝子欠損マウスでは、p53遺伝子欠損マウスに比べて腫瘍の自然発生が促進しており(昨年の本大会で発表)、多段階発癌のモデルとして発癌機構の解析に有用であると考えられる。本研究では、IRF-1, p53両遺伝子の欠損によって、細胞レベルでどのような異常が生じているかを、胎児線維芽細胞(EF)を用いて検討した。p53欠損EFは、野生型あるいはIRF-1欠損EFに比べて増殖速度が高く、細胞飽和密度も上昇しているが、IRF-1, p53両遺伝子欠損EFでは、細胞飽和密度がさらに上昇していた。またシスプラチンやMNNGで前処理したp53欠損EFは、ウワバイン耐性コロニーの出現頻度が上昇しているが、IRF-1,p53両欠損EFでは、そのコロニー数が数倍増加することも明らかとなった。このような細胞レベルでの異常が、in vivoでの腫瘍発生にどのように反映されるかを検討するために、種々のaggregationキメラマウスを作製し、発生した腫瘍の遺伝子型を検索した。その結果、同一個体内においても野生型よりもp53欠損細胞、さらにp53欠損細胞よりもIRF-1、p53両欠損細胞がより腫瘍化しやすいことが明らかとなった。