ABSTRACT 260(5-6)
NF-κB p65 と細胞周期制御因子 p53 の機能的相互作用:山本健一、清水弘子(金沢大・がん研・病態生理)
Functional and physical interactions between NF-κB Rel A and p53:Ken-ichi. YAMAMOTO and Hiroko. SHIMIZU(Dept. of Mol. Pathol., Cancer Res. Inst., Kanazawa Univ.)
炎症反応に重要な役割を果たしている転写因子 NF-κB が、(1)炎症刺激以外に DNA 損傷刺激によっても活性化される、(2)NF-κB 系の異常によって細胞増殖やアポトーシスに異常が起こる等、NF-κB と細胞周期・アポトーシスとの関連を示唆されているが明らかではない。今回我々は、細胞周期制御因子 p53 と NF-κB との機能的相互作用について検討した。まず我々は、p53 によって制御されている CDK インヒビター p21 プロモーターのルシフェラーゼレポーターを Saos-2 細胞( p53-null cell line ) に p53 発現ベクターとともに導入し、その p53 による活性化への NF-κB の影響を、NF-κB p65 あるいは p50 発現ベクターをそれぞれ cotransfect することにより検討した。その結果、NF-κB p50 ではなく p65 発現ベクター導入によってのみ p53 による p21 プロモーターの活性化が抑制された。一方、IκBα の dominant-negative form により p53 による p21 プロモーターの活性化は逆に増強した。NF-κB p65 による p53 転写活性の阻害の機序として、NF-κB p65 が転写活性化の coactivator である p300 および CBPと結合することから、p300 および CBP への結合における NF-κB p65 および p53の競合が考えられた。しかし、NF-κB p65 による p53 転写活性の阻害が p300 / CBP 強制発現により完全に解除されないことから、機序として NF-κB p65 と p53 の間の直接的な相互作用が考えられ、実際、NF-κB p65 が p53 と直接相互作用することを認めた。