ABSTRACT 264(5-6)
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クロマチンリモデリング因子TAF-IとNAP-Iの機能的連関:永田恭介(東京工大・生命理工)

Functional interaction of chromatin remodeling factors, TAF-I and NAP-I : Kyosuke NAGATA (Dept. Biomol. Eng., Tokyo Institute of Technology)

Template Activating Factor (TAF)-I alphaとbeta はクロマチン様構造をとったアデノウイルスゲノムを鋳型とした無細胞複製・転写反応を活性化する因子としてヒト細胞より同定された。TAF-I beta は、ある種の急性骨髄性白血病に見いだされる染色体転座領域においてcan 遺伝子と融合しているset 遺伝子産物と同一である。TAF-Iの生理機能やがん化過程での機能については明かではなく、本研究ではその手掛かりを得るために酵母のヒトTAF-IホモログおよびTAF-Iと構造的に相同性の高いNAP-I(Nucleosome Assembly Protein-I)の機能について解析を行った。組換えタンパク質を用いた解析から、NAP-IにもTAF-Iがもつクロマチン構造の変化を誘因し複製や転写を活性化する機能が、またNAP-Iのヌクレオソーム形成補助機能がTAF-Iにも見いだされ、両者は構造上だけではなく、クロマチン構造の変換という機能の上でも関連したタンパク質であることが示された。酵母の遺伝子破壊により、TAF-IもNAP-Iも細胞の増殖には必須ではないが、NAP-Iの欠損体ではTAF-Iの欠損体では見られない細胞形態や温度感受性の変化などが観察された。NAP-I欠損体の形質はこの欠損体からのさらなるTAF-Iの欠損により相補されたことから、両者は生理的にも連関していることが示唆された。両者ともにサイクリンBと強く相互作用することなども含めて、機能的連関について考察する。