ABSTRACT 279(5-8)
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細胞接着斑蛋白質 Hic-5 とチロシンホスファターゼ MPTP-PESTとの相互作用及び増殖制御への関与:西谷直之,柴沼質子,野瀬清(昭和大・薬・微生物)

Involvement of the interaction between Hic-5 and MPTP-PEST in the cell growth regulation: Naoyuki NISHIYA,Motoko SHIBANUMA,Kiyoshi NOSE (Dept. of Microbiol., Sch. of Pharm. Sci., Showa Univ. )

[目的] TGF-β1誘導性遺伝子hic-5 は、多くの癌細胞でその発現レベルが低下しており、ヒト不死化繊維芽細胞を用いた強制発現系では、分裂寿命の獲得を含む老化細胞様の表現型を誘導した。C末端LIMドメインを bait に用いた two hybrid screening により、Hic-5 結合因子としてチロシンホスファターゼMPTP-PEST が 単離された。そこで今回、Hic-5/MPTP-PEST 間の結合様式と Hic-5 の増殖抑制活性との関連を明らかにすることを目的とした。 [結果] Hic-5 の4つのLIMドメインを欠く一連の deletion mutants を作成し、MPTP-PESTとの 結合実験を行った。その結果、LIM3がこの結合に関与することが示された。次に、これらのmutant 発現ベクターをヒト不死化繊維芽細胞に導入し、コロニー形成率に変化が見られるかを検討したところ、MPTP-PEST 結合に必要なLIM3までを欠くmutant にコロニー形成率を激減させる活性が見られた。また、現在、Hic-5のチロシンリン酸化レベルの変化、Hic-5 による MPTP-PEST活性への影響について検討を加えている。[結論・考察] 今回、Hic-5 がC末端のLIMドメインを介して MPTP-PEST と結合することが示された。更に、この結合が細胞増殖に関与することが示唆された。また、Hic-5 はN末側を介して FAK や Pyk2 などのチロシンキナーゼと相互作用することが知られている。これらの結果から、Hic-5 は細胞内蛋白質のチロシンリン酸化レベルを制御するアダプター分子として働き、細胞増殖や細胞死に影響を与える因子であると考えている。