ABSTRACT 286(5-8)
電離放射線により発現上昇し、アポトーシスを促進させる新規転写因子遺伝子のクローニング:加藤 修1、蔵本 憲2、小栗鉄也3、高橋利明3、平田 思4、渡辺敦光1(1広島大・原医研・環境変異、2同・血液内科、3広島大・第二内科、4広島大・耳鼻咽喉科)
ZK1, a novel Krueppel-type zinc finger gene, is induced following exposure to ionizing radiation and enhances apoptosis: Osamu KATOH1, Ken KURAMOTO2, Tetsuya OGURI3, Toshiaki TAKAHASHI3, Shitau HIRATA4, Hiromitsu WATANABE1 (1Dept. Environ. & Mut., 2Dept. Hematology & Oncology, RIRBM, 32nd Dept. Int. Med., 4Dept. Otolaryngology, Hiroshima Univ.,)
電離放射線の曝露に対して血液細胞はアポトーシスを起こして細胞死に至ることが知られている。この分子機構を明らかにすることを目的として、ヒト白血病細胞株においてガンマ線照射により発現上昇が認められ、Zn-finger motifを持つ転写因子遺伝子のクローニングをdegenerate primer を用いたRT-PCR法により試みた。その結果、新規転写因子遺伝子cDNA(ZK1)をクローニングした。ZK1cDNAは、全長約2.6kbでその遺伝子産物は671アミノ酸からなり、N末にKrueppel-associate box (KRAB) A boxを有しており、C末側には15個のC2H2タイプのZn-finger motifが並んでいた。 ZK1mRNAの発現をノーザンブロット解析により検討した結果、ガンマ線を照射された白血病細胞株においては線量依存性、時間依存性にZK1mRNAの発現が高まった。また、ヒト各臓器における発現を検討した結果、spleen、 kidney、lung、placenta、ovaryでZK1mRNAの発現が高かった。さらに、ZK1cDNAを哺乳類細胞発現ベクターpBK-CMVに組み込み、32D細胞にトランスフェクトし、stable transfectantsを得た。これらの細胞株および親株に対してガンマ線を照射し、soft agar colony assayにより生存率を比較検討した結果、transfectantsの生存率は有意に低下していた。従って、ZK1遺伝子産物は放射線誘導アポトーシスを促進させることが明らかとなった。以上の結果から新規転写因子遺伝子ZK1は放射線照射により発現上昇し、アポトーシスに関与する遺伝子の発現調節を行うmediatorとして機能することが示唆された。