ABSTRACT 290(5-9)
コンディショナルジーンターゲティング法を用いた腫瘍形成過程におけるβカテニンの機能解析:高野洋志1.2, 石原 悟3, 月田承一郎3, 野田哲生1.2(1東北大・医・分子遺伝, 2癌研・研・細胞生物, 3京大・医・分子細胞情報)
The role of β-catenin in tumorigenesis by conditional gene targeting method:Hiroshi TAKANO1.2, Satoru ISHIHARA3, Shoichiro Tsukita3 and Tetsuo NODA1.2(1Dept. Mol. Genet., Tohoku Univ. Sch. Med., 2Dept. Cell Biol., Cancer Institute, 3Dept. Cell Biol., Fac. Med., Kyoto Univ.)
【目的】βカテニン分子には、細胞膜直下で細胞接着分子カドヘリンと結合してその接着性を制御する機能と、細胞質内においてWntシグナルを受けて、これを核に伝達する機能の、2つの全く異なる機能が知られている。近年、家族性大腸腺腫症の原因遺伝子であるAPC遺伝子の産物が細胞質内のβカテニンの分解に関与しており、APC変異は細胞質内にβカテニンを蓄積させ、Wntシグナルを核に伝達することにより腫瘍形成を誘導するという仮説が立てられている。そこで我々は、このAPC変異による腫瘍形成におけるβカテニンの役割を直接的に証明するために、βカテニンのコンディショナルノックアウトマウスの樹立を試みた。【方法および結果】βカテニン遺伝子の第2イントロン及び第6イントロン内にloxP配列を挿入した形の変異をES細胞のβカテニン遺伝子に導入することによりコンディショナルノックアウトマウスを作成した(β-catenin6S)。F1ヘテロ同士の交配を行ったところ、β-catenin6Sアレルをホモにもつマウスはメンデル比にしたがって正常に誕生し、これによりβ-catenin6Sアレルは野生型アレルと同じβカテニンの機能を保持していることが明らかとなり、βカテニン遺伝子のコンディショナルノックアウトマウスの樹立が確認された。現在、βカテニンの欠失がAPC変異による腫瘍形成に及ぼす影響を明らかにするために、APCコンディショナルノックアウトマウスとの交配を行っている。