ABSTRACT 292(5-9)
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ジーンターゲティング法によるvon Hippel-Lindau癌抑制遺伝子の機能解析:中井茂康1,2,小川 淳1,野城孝夫2,高野洋志1,3,福田繭子1,小林智子1,斉藤 泉4,美野輪 治1,野田哲生1,31癌研・細胞生物,2東北大・医・二内,3東北大・医・分子遺伝,4東大医科研・遺伝子解析)

Functional analysis of VHL tumor suppressor gene by gene targeting:Shigeyasu NAKAI1,2,Atsushi OGAWA1,Takao NOSHIRO2,Hiroshi TAKANO1,3,Mayuko FUKUDA1,Tomoko KOBAYASHI1,Izumu SAITO4,Osamu MINOWA1,Tetsuo NODA1,3(1Dept. Cell Biol., Cancer Inst.,22nd Dept. Intern. Med., Tohoku Univ. Sch. Med.,3Dept. Mol. Genet., Tohoku Univ. Sch. Med.,4Lab. Mol. Genetics, Inst. Med. Sci., Univ. Tokyo)

[目的および方法]von Hippel-Lindau (VHL) 病は、中枢神経系の血管芽腫、腎細胞癌、褐色細胞腫などを合併する常染色体性優性遺伝の高発癌症候群である。この疾患の原因遺伝子としてVHL遺伝子が単離され、散発性のclear cell typeの腎細胞癌などでも高率にVHL遺伝子の変異やヘテロ接合性の消失が認められることから癌抑制 遺伝子であると考えられている。また、VHL蛋白がElongin B,Cと結合しRNA pol IIによる転写伸長を抑制することや、VBC複合体と結合能を有するCUL-2の同定が近年報告された。VHL病は、褐色細胞腫を合併するType Iと合併しないType IIの2つに分類され、Type Iではノンセンス変異や欠失変異が、Type IIではミスセンス変異が多く認められることを特徴とする。我々はVHLの生体内での機能を明らかにするため、これらの病型に特異的な変異を有するマウスをジーンターゲティング法により樹立した。
[結果]VHL TypeI 疾患モデルマウスのホモ接合体は心不全のため胎生13.5日前後で死亡し、心臓と血管形成に異常が認められた。このホモ接合体では血管形成に関わるVEGF (血管内皮細胞増殖因子)のmRNAの発現レベルが上昇していることから、VHL蛋白がVEGFの発現を抑制 性に制御している可能性が示唆された。さらに、Type Iのホモ接合体で発現が増大しているVEGFの発現部位をin situ ハイブリダイゼーション法により詳細に検討を行ったので、その結果を報告する。また、aa169 (Tyr→His)にミスセンス変異を有するVHL TypeIIA疾患モデルマウスの解析結果についても報告する予定である。