ABSTRACT 297(5-9)
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ラットLIF cDNA のクローニングとそれによるラットES細胞の未分化能の維持:高濱靖1、2、落谷孝広1、佐々木博己1、馬場弘靖3、小西宏育1、中野博重2、寺田雅昭11国立がんセ研・分子腫瘍、3同・化学療法、2奈良医大・一外)

Molecular cloning and expression of cDNA encoding a rat leukemia inhibitory factor: towards generation of pluripotent rat embryonic stem cells: Yasushi TAKAHAMA1,2, Takahiro OCHIYA1, Hiroki SASAKI1, Hiroyasu BABA3, Hiroyasu KONISHI1, Hiroshige NAKANO2, Masaaki TERADA1 (Nat'l. Cancer Ctr. Res. Inst., 1Genetics Div., 3Chemotherapy Div., 2First Dept.of Surg., Nara Medical Univ.)

Leukemia inhibitory factor (LIF) は最初マウスの骨髄系白血病細胞株(M1)を分化誘導させる因子としてクローニングされた多様な生物学的活性を持つサイトカインである。その活性の一つとして胚性幹細胞(ES細胞) の分化阻止活性;Differentiation inhibitory activity (DIA)があることが報告されている。 ES細胞の未分化能を維持するためにはDIAが必要であるが、マウスのLIFを使用することにより、生殖細胞にまで分化できるES細胞を樹立し、遺伝子導入マウスや遺伝子欠損マウスが作成されている。マウスは疾患モデル動物として有用であるが、発癌や心疾患に関するモデルとしてはその特性からマウスよりもラットの方が有益な場合がある。しかしながらマウスのLIFではラットのES細胞を未分化能を維持したまま増殖させることが今のところ不可能である。そこでわれわれはラットのES細胞を生殖系細胞まで再構築させ、さらに遺伝子欠損ラットを作成する目的でラットのLIF cDNAをクローニングし、その塩基配列とアミノ酸配列を決定した。その結果、ラットLIFはマウスLIFと比べ、塩基配列で93%、アミノ酸で91%の相同性があり、その発現は胎生10日から15日までのラット胎児から初代培養された胎児線維芽細胞にみられた。われわれのクローニングしたラットLIF cDNAを導入したラット線維芽細胞培養液上清中にM1細胞を分化誘導するLIF活性があることが判明し、さらにこの上清はラットES細胞を未分化のまま維持することが可能であり、その能力はマウスLIFに比べてはるかに高いものであった。
以上の結果からラットLIFはラットES細胞の培養および遺伝子操作ラットを作成するために有用であると考えられる。