ABSTRACT 298(5-9)
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Rac によるラッフル膜形成に必要な actpolin-profilin アクチン重合誘導システムの機能:三木裕明、末次志郎、竹縄忠臣(東大・医科研・細胞生物化学)

Essential role of actin-polymerization induced by actpolin-profilin protein complex in Rac-induced membrane ruffling:Hiroaki MIKI, Shiro SUETSUGU, Tadaomi TAKENAWA (Dept. Biochem., Inst. Med. Sci., Univ. Tokyo)

WASP および N-WASP から成る WASP ファミリー蛋白はシグナル依存性のアクチン細胞骨格再構成に関わる。蛋白の C 末部にはアクチンに直接結合できるドメインがあり、その部分の相同性に基づいて我々は新たな WASP ファミリー蛋白、 actpolin (actin-polymerization inducer) を同定した (第 20 回日本分子生物学会年会)。actpolin を強制発現すると、既存のアクチン細胞骨格を破壊し、actpolin の存在部位に重なってアクチンフィラメントのクラスターができた。actpolin には Pro-rich モチーフがあり、アクチン重合に関わる profilin と結合した。実際アクチン結合性を欠失させた profilin 変異体の共発現によりアクチンクラスター形成は阻害され、この現象が profilin を介した ectopic なアクチン重合によるものであることが示唆された。内在性の actpolin はラッフル膜部位に強く局在しており、活性化型 Rac の発現により細胞質中の actpolin がラッフル膜部位に移行した。このとき actpolin と Rac とが複合体を形成していることも免疫沈降法により確認された。アクチンに働きかけられない変異型 actpolin を発現させると Rac によるラッフル膜形成を特異的に阻害し、Cdc42 によるマイクロスパイク形成には影響しなかった。またこの変異型 actpolin は増殖因子刺激による Swiss 3T3 細胞のラッフル膜形成も阻害した。以上の実験結果は actpolin と profilin の蛋白複合体 が Rac の下流においてアクチンの重合を誘導し、それを基礎としてラッフリングが起こることを示唆している。