ABSTRACT 343(6-1)
リンパ節HEVのL−セレクチンリガンド、6−硫酸化シアリルLexおよびMECA−79抗原は共通の硫酸基転移酵素で合成される: 木村尚子1,光岡ちか子1,平岩 望1,金森審子1,玉谷卓也2,内村健治3,村松 喬3,神奈木玲児1(1愛知がんセ・2病,2JT・探索研,3名大医・第一生化)
A common 6-sulfotransferase is involved in the synthesis of 6-sulfo sialyl Lewis X and MECA-79 determinants, the putative L-selectin ligands on HEV endothelial cells. Naoko KIMURA1, Chikako MITSUOKA1, Nozomu HIRAIWA1, Takuya TAMATANI2, Kenji UCHIMURA3, Takashi MURAMATSU3, Reiji KANNAGI1(1Exp. Pathol., Aichi Cancer Ctr., 2JT, Res. Lab., 31st. Dept. Biochem., Nagoya Univ.)
リンパ球のリンパ節へのホーミングは、リンパ球のL-セレクチンと、HEVに発現するリガンド糖鎖を介した接着によって開始される。この細胞接着は、リンパ系悪性細胞のリンパ節浸潤の機序としても重要である。我々は昨年、ヒトリンパ節HEVでは6−硫酸化シアリルLexがL-セレクチンのリガンドとして働く事を報告した。一方従来から、単クローン抗体MECA-79の認識抗原が、HEV上のL-セレクチンリガンドとされてきた。今回我々は、この両抗原の異同および合成系路を検索したので報告する。【方法】検索の対象としてヒト凍結リンパ節切片およびフコシルトランスフェラーゼVII(Fuc-TVII)および6−硫酸基転移酵素(6-Sul-T)を強制発現したヒト血管内皮細胞株ECV304を用い、免疫組織染色およびフローサイトメトリーにて6−硫酸化シアリルLexおよびMECA-79抗原を検索した。6−硫酸化シアリルLex系統の抗原の検出にはG152・G72抗体を用いた。【結果】(1)ヒトHEVにはG152抗体で認識される6−硫酸化シアリルLexが検出され、これらの抗体はリコンビナントL-セレクチンのHEVへの結合を阻止した。しかし、G152抗体は、マウス、ラットHEVには反応しなかった。(2)MECA-79抗体はヒトHEVと反応し、リコンビナントL-セレクチンのHEVへの結合を阻止した。本抗体はマウス、ラットHEVとも反応した。(3)ECV304細胞は、いずれの抗原も発現せず、Fuc-TVII強制発現クローンでは通常のシアリルLexのみが検出され、6−硫酸化シアリルLexは検出されなかった。6-Sul-T強制発現細胞では、G72抗体で6−硫酸化シアリルラクトサミンが検出され、6−硫酸化シアリルLexは検出されなかった。6−硫酸化シアリルLexは、Fuc-TVII・6-Sul-Tの二重強制発現細胞にのみ検出された。(4)MECA-79抗原は、6-Sul-T強制発現細胞およびFuc-TVII・6-Sul-Tの二重強制発現細胞とで発現された。【考察】以上から、6−硫酸化シアリルLexとMECA-79抗原は共通の6-Sul-Tで合成され、MECA-79抗体の反応性には、フコースは要求されないことが判明した。